人間をはじめ生物には、本来の機能が損なわれるようなことが起きた場合、自らが修復を行おうとする不思議な力があります。
これを「自然治癒力」と言いますが、建築物の素材のひとつであるコンクリートに、このような力を持たせようとする研究があります。
自然物ではないコンクリートなので、力を持たせるというよりは、そのような性能が生まれる仕組みを作ろうというわけです。
ひび割れが起きて水が沁み込んでくるようになったら、その水と水和反応してひび割れを塞いでしまうとか、鉄筋の代わりに形状記憶合金を使用し、ひび割れを修復するというような性能を持った鉄筋コンクリートの研究は、古い文献では1999年頃のものがあり、既に20年近い歴史があります。
2014年にはダイワボウポリテックから、モルタル・コンクリートのひび割れを自己治癒させる短カット繊維「マーキュリーC」が発売されています。
住宅の基礎は鉄筋コンクリートで作るのですが、乾燥収縮によるひび割れは避けることが出来ない現象でした。
ひび割れによって雨水がコンクリート基礎内に染みこみ、やがて鉄筋を錆びさせて基礎の耐久性を著しく低下させます。
土台から上の構造部分の耐震性をいかに高めたとしても、基礎に弱点があっては何にもなりません。
基礎がいつまでも健全であるからこそ、100年、200年と長寿命な住宅が可能になります。
現代の技術開発の進歩のスピードを見ると、そう遠くは無いうちに、自己治癒コンクリートが普及されることになると思います。