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売主は境界を明示して土地の測量図を買主に引渡さなければならない

不動産売買の対象である土地について売買契約書では「測量図の引渡しと境界の明示」をすることが、売主の義務として書かれています。
測量図は土地の面積の根拠となる資料であり、土地の周囲・各辺の寸法が書かれているので、隣接する土地との境界を明らかにする根拠にもなります。
売主から買主に引渡す測量図は売主が準備するものです。そして隣接地との境界線(点)を明確にすることも売主の責任です。
しかし実務上は媒介する宅建業者が境界石を現地にて確認し、法務局に保管されている「地積測量図」の写しを取得して買主に引渡したりしています。

ここでは、土地の境界石や測量図についての調査や準備について、媒介業者が知っておきたい知識をまとめておきます。

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土地に関する資料を準備する

土地に係わる資料としては、登記事項証明書と測量図です。
登記事項には次にあげる事項についての記載があります。

  • 地番
  • 面積
  • 地目

土地は一つの区画が一つの地番になります。これを「筆」と言い取引する土地の地番が一つの場合は「一筆の土地」と表現します。
一筆の土地には必ず面積が表示され地目が記載されます。

面積は土地を測量することによって正確に計算されるのですが、取引の度に精密な測量をするわけではありません。
契約対象の面積の確定に関しては二つの方法があります。

  1. 実際に測量を行った結果に基づいた面積による
  2. 登記簿に記載されている面積による

1番の「実測取引」では後に説明する「確定測量図」か「現況測量図」を引き渡します。
2番の「公簿取引」では後に説明する「確定測量図」か「現況測量図」か「地積測量図」か「その他の測量図」を引き渡します。

公簿の場合は、法務局に保管されている「地積測量図」によって、土地の面積・寸法・境界が明確になる場合は、地積測量図の写しを引渡すことが多く見られます。

土地測量図の種類

土地の測量図の種類には4種類あります。

  • 確定測量図は、隣接地所有者全員の立会いのもと境界を確認した測量図です。後々のトラブルが少なくすべての取引で作成するのが望ましいのですが、時間と費用がかかります。立会いによって境界の位置を承諾しないケースもあり、結果として確定測量図が作成できないこともあります。
    隣接地の所有者には、道路・河川・公園など地方自治体や国も含まれ、境界確認の手続きに従わなければなりません。
  • 現況測量図は、隣接地全員の立会いを省略したもの、または境界確認の承諾が取れない場合に作成する測量図です。境界の中には承諾が取れたものと、承諾が取れないものがあり、時にはすべての境界確認の承諾が取れてない場合もあります。
  • 地積測量図は、法務局に保管されている土地の測量図です。
    不動産の登記制度ができたのが昭和35年ですので、古い地積測量図の中には昭和35年作成というものがあるかもしれません。古いものほど信頼性が低いので、現況測量図を作成する方が望ましい場合もあります。
    平成16年以降の地積測量図には、筆界点の座標を記載するようになったので、より正確な地積測量図で取引できると言えるでしょう。
  • 地籍図は、国土調査法にもとづき地方自治体が行う地籍調査の結果作成した図面です。歴史のある都市部では土地の境界や地積が不明なまま利用され、売買されたりしている地域が多く、正確な土地に関する資料の整備が必要とされています。
    地籍調査を行った場合には、法務局には古い地積測量図しかなく、新しい図面は自治体に保管されているケースもあります。
    不動産の取引では、法務局保管の地積測量図に加えて自治体保管の地籍図を添付する方が望ましいでしょう。

境界石が無く境界を明示できない場合

土地の境界が明確になっている場合は問題ありませんが、困るのが境界あたりを掘っても境界石が見つからない場合です。

境界石が見つからない場合は“筆界”を明示することはできません。代わりに“所有権界”が明確であり、買主の承諾を得られるのであれば、“所有権界”を明示することによって境界を明示することにします。

“筆界”を明示する必要がある場合には、測量を行い確定測量図または現況測量図を買主に引渡し、境界票あるいは境界石を設置します。

不動産取引の際だけに限らず、境界が明確になっていない為にお隣とトラブルになるということもあります。
そのような場合に活用できるのが“筆界特定制度”です。

筆界特定制度

土地の境界がはっきりせずトラブルになった場合、以前は裁判による「筆界確定訴訟」によって争いの解決を図ってきました。ところが、裁判では時間と費用がかかり過ぎるので、もう少し簡単にトラブル解決を図る方法として平成18年に始まった筆界特定制度というものがあります。

筆界とは
公法上の境界のことで、私法上の境界(所有権界)と対になる言葉です。筆界と所有権界は本来は一致するものですが、異なる場合も多いものです。
筆界特定制度を利用するには
隣接地との境界に境界石が無いなど、境界が明確でない場合に筆界特定制度を利用できますが、法務局に申請します。
申請できる人は所有者または相続人です。
筆界を特定する手順は
筆界特定の申請があると法務局の筆界特定登記官は、外部専門家である筆界調査委員の意見や、土地の測量結果などに基づき筆界を特定します。
筆界特定制度の費用は
費用は土地の固定資産評価によって異なります。
法務局に納める「手数料」に必要に応じて「測量費用」がかかります。
費用の計算方法は 筆界特定制度の費用についてが参考になります。

筆界特定制度によって境界が確定できても、隣接地所有者の同意が無いと境界石(境界標)を設置することはできません。

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