第三者のためにする契約に書くべき特約条項の内容

平成17年に新しくなった不動産登記法により、これまで行われていた中間省略登記による売買が認められなくなり、平成19年1月12日から“新しい中間省略登記による売買”=第三者のためにする契約によって売買が行われるようになりました。

参考 いわゆる「中間省略登記」に係る不動産取引の運用改善について

参考 直接移転取引(省略的登記)に関する一考察

全宅連などの契約様式には「第三者のためにする契約」様式は無く、初めてこの形式による売買契約を準備している担当の方は、いろいろ探しておられることと思います。
ここでは、第三者のためにする契約に付する特約条項について、実際の売買契約書で使われた文言について解説します。

第三者のためにする契約に付する特約条項の例

第三者のためにする契約を図にすると次のようになります。

第三者のための契約

A - B間で売買契約を締結し、買主Cが決定したらB - C間で契約します。

所有権移転は A → C と直接移転登記します。

代金決済については二通りあります。

  • C → B → A = 一般的な「第三者のためにする契約」方式
  • C → A = 「買主の地位の譲渡契約」方式

*「買主の地位の譲渡契約」方式による契約はほとんどありませんが参考までに「買主の地位を譲渡する契約方式と第三者のためにする契約との違い」を追加しました。

買主の地位を譲渡する契約方式と第三者のためにする契約との違い
中間省略登記による新しい形態における特約条項の内容について「第三者のためにする契約に書くべき特約条項の内容」で先日記事を書きましたが、そこで簡単に触れた「買主の地位の譲渡契約」についてここでは少し解説しておこうと思います。 「...

特約条項はほとんどの場合、共通の文言が使えるのでいつも使っている文言を紹介します。
司法書士法人はらこ事務所さんが紹介している特約条項がすごく分かりやすく、いつも使わさせてもらっています。

A - B間の売買契約で使う特約条項

(所有権の移転先及び移転時期)
1 買主は、本物件の所有権の移転先となる者(買主を含む)を指定するものとし、売主は、本物件の所有権を買主の指定する者に対し、買主の指定および売買代金全額の支払いを条件として直接移転することとする。
(所有権留保)
2 売買代金全額を支払った後であっても、買主が買主自身を本物件の所有権の移転先に改めて書面をもって指定しない限り、買主に本物件の所有権は移転しないものとする。
(受益の意思表示の受領委託)
3 売主は、移転先に指定された者が売主に対してする「本物件の所有権の移転を受ける旨の意思表示」の受領権限を買主に与える。
(買主の移転債務の履行の引受け)
4 買主以外の者に本物件の所有権を移転させるときは、売主は、買主がその者に対して負う所有権の移転債務を履行するために、その者に本物件の所有権を直接移転するものとする。

特約条項の解説

特約条項を読んでみて分かるような分からないような・・・というところもありますので、解説します。

所有権の移転先及び移転時期
所有権の移転先と時期について定めていますが、所有権の移転先に(買主を含む)との記述があります。
買主=B を所有権移転先として指定することもあり得るという意味になるのですが、この記述は必ず必要です。
一般的に買主=B は宅建業者であることがほとんどです。宅建業者は他人物売買契約を禁止されていますが、例外として、買主=B が他人物の所有権の移転を実質的に支配していることが客観的に明らかである場合等、一定の類型に該当する場合には宅建業法第33条の2(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限)の適用が除外される。ことになっています。
そこで、「他人物の所有権の移転を実質的に支配」していることを表す為に(買主を含む)が必要になるわけです。
所有権留保
第三者のためにする契約は、A-B間の売買契約とB-C間の売買契約が関連するものです。買主=B に所有権を移転する場合は、B-C間の売買契約は存在しません。その為、A-B間での売買代金全額の支払いがあった後であっても、買主=B に所有権を移転する場合は書面にて売主=A に通知しなければなりません。
受益の意思表示の受領委託
第三者=C は所有権の移転を受ける意思表示を、売主=A にしなければその権利は発生しません。しかし、第三者=C と売主=A との間に債権債務の関係はありませんので、売主=A に代わって買主=B が第三者=C からの意思表示を受けることが出来るようにします。
買主の移転債務の履行の引受け
この特約条項により、売主=A から第三者=C へ所有権移転を直接行うことを定めます。

B - C間の売買契約で使う特約条項

(所有権移転の時期)
1 本物件の所有権は、買主が売買代金の全額を支払い、売主がこれを受領した時に、本物件の登記名義人から買主に直接移転する。
(第三者の弁済)
2 本物件は、未だに登記名義人が所有しているので、本物件の所有権を移転する売主の義務については、売主が売買代金全額を受領した時に、その履行を引き受けた本物件の登記名義人である所有者が、買主にその所有権を直接移転する方法で履行することとする。

特約条項の解説

A - B間の特約条項よりは分かりやすいのですが念のために解説します。

ここでの「売主」は先の説明による「買主=B」のことです。そして「買主」は先の説明による「第三者=C」になります。

所有権移転の時期
「第三者=C」が売買代金全額を「買主=B」に支払う時に、物件の登記名義人にである「売主=A」から「第三者=C」に所有権を直接移転することを表しています。
第三者の弁済
代金の全額受領によって生まれる「買主=B」の所有権移転の義務は、「売主=A」が履行を引受けたので、「売主=A」から「第三者=C」へ所有権を移転することを表しています。

まとめ

A-B間の売買契約とB-C間の売買契約は以上の特約条項を付すことによって、第三者のためにする契約の形態が整います。

特約条項にはこの他通常の取引において記載することの多い、瑕疵担保責任や経年劣化などについての特約があります。
それらの特約条項と区別する方が分かりやすい為、【第三者のためにする特約条項】などと表題をつけて段落を別にして記載する方法もあるかと思います。

また、一般的な契約書の様式に書かれている契約条項の内容と抵触する部分が出てくるので、契約条項の末尾(特約条項)に以下の文言を加える方がよいと思います。

前条までの条項の内容が特約条項の内容と抵触する規定がある場合には、特約条項の内容が優先するものとする。

四者間の契約に関する記事がありました 四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について

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