「被災市街地復興特別措置法」に関して説明すべき重要事項と法律の背景

大きな災害により市街地に大きな被害が及んだとき、市街地の復興の為に街づくりを計画的に進める必要があります。個人や企業が自由に土地を造成したり建物を建てたりする行為を一定期間制限し、街づくりの全体計画に沿った秩序ある復興を目的とした法律が「被災市街地復興特別措置法」です。

「被災市街地復興特別措置法」について重要事項説明で説明すべき項目は第七条第一項の「建築行為等の制限等」です。

第七条 被災市街地復興推進地域内において、第五条第二項の規定により当該被災市街地復興推進地域に関する都市計画に定められた日までに、土地の形質の変更又は建築物の新築、改築若しくは増築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害(第五条第一項第一号の災害を含む。)のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為

被災市街地復興特別措置法最終更新:基準日

被災地における建築等の制限

大きな地震や火災、津波などの被害に遭った地域では、都市計画で定める「被災市街地復興推進地域」に指定すると、建築物の建築等は許可が必要になります。
不動産売買の対象地が「被災市街地復興推進地域」であった場合、建築等に対する制限があるので、第7条1項の説明が必要です。

、建築等の制限をする法律として他に「建築基準法第39条」と「建築基準法第84条」がありますが、「建築基準法第39条」は災害の危険性がある地域をあらかじめ指定する法律です。「建築基準法第84条」は災害が起きた時に適用する法律です。
災害のあった地域での不動産売買には、建築基準法の確認も必要です。

建築基準法第39条(災害危険区域)
  1. 地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。
  2. 災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める。
建築基準法第84条(被災市街地における建築制限)
  • 特定行政庁は、市街地に災害のあつた場合において都市計画又は土地区画整理法による土地区画整理事業のため必要があると認めるときは、区域を指定し、災害が発生した日から一月以内の期間を限り、その区域内における建築物の建築を制限し、又は禁止することができる。
  • 特定行政庁は、更に一月を超えない範囲内において前項の期間を延長することができる。

契約後引渡し前に災害に見舞われたときの売買契約

すでに被災地となっている不動産の売買においては、上記の制限について説明をし、買主の納得のうえ契約締結に至れば何ら問題は無いのですが、売買契約後に大きな災害に見舞われ、対象不動産そのものには被害は無かったのですが、対象不動産が存在する地域一帯が「被災市街地復興推進地域」および「建築基準法84条」により、建築物制限を受け場合の契約について考えてみます。

被災市街地復興特別措置法と建築基準法第84条が売買契約に与える影響

建築基準法第84条による建築制限は最大2ヶ月間であり、期限が経過すると、他の法律による制限が無ければ建築等の制限は受けません。

問題は被災市街地復興特別措置法です。

「被災市街地復興特別措置法」第七条には第二項があり、「被災市街地復興推進地域」での許可について次のように定めています。

都道府県知事等は、次に掲げる行為について前項の規定による許可の申請があった場合においては、その許可をしなければならない。

  • 一 土地の形質の変更で次のいずれかに該当するもの
    • イ 被災市街地復興推進地域に関する都市計画に適合する〇・五ヘクタール以上の規模の土地の形質の変更で、当該被災市街地復興推進地域の他の部分についての市街地開発事業の施行その他市街地の整備改善のため必要な措置の実施を困難にしないもの
    • ロ 次号ロに規定する建築物又は自己の業務の用に供する工作物(建築物を除く。)の新築、改築又は増築の用に供する目的で行う土地の形質の変更で、その規模が政令で定める規模未満のもの
    • ハ 次条第四項の規定により買い取らない旨の通知があった土地における同条第三項第二号に該当する土地の形質の変更
  • 二 建築物の新築、改築又は増築で次のいずれかに該当するもの
    • イ 前項の許可(前号ハに掲げる行為についての許可を除く。)を受けて土地の形質の変更が行われた土地の区域内において行う建築物の新築、改築又は増築
    • ロ 自己の居住の用に供する住宅又は自己の業務の用に供する建築物(住宅を除く。)で次に掲げる要件に該当するものの新築、改築又は増築
      • (1) 階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと。
      • (2) 主要構造部(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第五号に規定する主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。
      • (3) 容易に移転し、又は除却することができること。
      • (4) 敷地の規模が政令で定める規模未満であること。
    • ハ 次条第四項の規定により買い取らない旨の通知があった土地における同条第三項第一号に該当する建築物の新築、改築又は増築

「規模が政令で定める規模未満」と「敷地の規模が政令で定める規模未満」について、被災市街地復興特別措置法施行令第4条で、法第七条第二項第一号ロ及び第二号ロ(4)の政令で定める規模は、三百平方メートルとする。と定めてます。

つまり敷地の規模が300㎡未満で、鉄筋コンクリート造の住宅以外は許可を受けることができます。

引渡しまでに市町村にて再確認をして下さい!

被災市街地復興特別措置法第七条第二項適用外の場合

被災市街地復興特別措置法第七条第二項の許可要件に該当しない場合は、建築等の行為は禁止となるので、買主の購入目的を達することが出来なくなることもあります。

被災市街地復興推進地域の指定による建築等の制限は期限があり、2年以内とされています。
買主の利用計画によっては、2年間の制限は、購入目的を達することが出来ず契約解除せざるを得ない場合もあるでしょう。
この場合、目的物には被害が無いことから「引渡し前の滅失・毀損」には無条件で該当しませんが、準用することにより契約解除するよう売主買主で協議することになるのかなと、思います。

東日本大震災での建築制限の特例

2011年3月11日の東日本大震災は未曾有の大被害となり、被害の範囲・規模は法律が想定していたものを超えていました。
被災地域での建築行為は、復興計画の骨組みができるまで禁止したいのが市町村の本音です。
しかし、制限をかける法律は先に書いたように限られており、制限の限界もありました。

  • 建築基準法第39条では住宅は禁止できるが、工場や店舗は禁止できない
  • 建築基準法第84条で制限できるのは2ヶ月
  • 被災市街地復興特別措置法では住宅の建築は禁止できない

そこで制限期間をある程度の幅にできるように制定されたのが「東日本大震災により甚大な被害を受けた市街地における建築制限の特例に関する法律」です。
この法律により2011年9月11日までの制限とさらに2ヶ月間の延長期間を確保して、復興への準備態勢を整えたものでした。

この時の経緯を宮城県の村井知事の記者会見で知ることができます。
》》 宮城県知事会見(引用文が長いのでpdfファイルにしてあります)

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