「歴史まちづくり法」に関して説明すべき重要事項と法律の背景

日本には歴史上価値のある建物や、その周辺と一体となって形成された良好な市街地の環境があり、そのような歴史的風致の維持向上を図る為に制定されたのが「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(略称:歴史まちづくり法)です。ここでは「歴史まちづくり法」について重要事項説明において必要とされる説明事項について解説します。

地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律において重要事項説明で説明すべき項目は以下の通りです。

  • 増築等の届出及び勧告等-第十五条第一項及び第二項
  • 行為の届出及び勧告等-第三十三条第一項及び第二項

歴史まちづくり法最終更新:平成29年5月12日

「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」の概要

日本には城郭や寺社など歴史的にも重要な建造物が各地にあります。
重要文化財に指定される建造物、そしてその周辺には史跡名勝天然記念物に指定される環境が整備されています。
これらは文化財保護法により保存・活用されてきましたが、平成20年に、文部科学省、農林水産省、国土交通省の共同管轄により制定する「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」により、歴史的風致の保存をより強力に推し進めることにより、歴史的な建造物の減少を食い止めることに期待が持たれています。

国が策定する「基本方針」に基づき、市町村は「歴史的風致維持向上計画」を策定し、国に対し認定申請を行います。
「歴史的風致維持向上計画」は3ヶ月以内に認定され、以下のような法律上の特例措置と各種事業の支援を受けることができます。

  • 法律上の特例措置
    • 歴史的風致形成建造物
    • 都市公園
    • 電線共同溝
    • 文化財保護
    • 農業用用排水施設
    • 屋外広告物
  • 各種事業による支援
    • 都市公園等事業
    • 都市再生整備計画事業
    • 街なみ環境整備事業
    • 地域用水環境整備事業

「歴史的風致維持向上計画」には「重点区域」を定めますが、重点区域内の歴史的建造物を「歴史的風致形成建造物」として指定することができます。

認定された歴史的風致維持向上計画のある市町村は以下の通りです。(平成31年3月末時点)
出典:歴史的風致維持向上計画の認定状況【文化庁】

都道府県 市町村 認定日
青森県 弘前市 平成22.2.4
岩手県 盛岡市 平成30.11.13
秋田県 大館市 平成28.10.3
横手市 平成30.7.11
宮城県 多賀城市 平成23.12.6
山形県 鶴岡市 平成25.11.22
福島県 白河市 平成23.2.23
国見町 平成27.2.23
磐梯町 平成28.1.25
桑折町 平成28.3.28
茨城県 桜川市 平成21.3.11
水戸市 平成21.3.11
栃木県 下野市 平成31.3.26
栃木市 平成31.3.26
群馬県 甘楽町 平成22.3.30
桐生市 平成30.1.23
埼玉県 川越市 平成23.6.8
千葉県 香取市 平成31.3.26
神奈川県 小田原市 平成23.6.8
鎌倉市 平成28.1.25
長野県 下諏訪町 平成21.3.11
松本市 平成23.6.8
東御市 平成24.6.6
長野市 平成25.4.11
千曲市 平成28.5.19
山梨県 甲州市 平成29.3.17
新潟県 村上市 平成28.10.3
静岡県 三島市 平成28.10.3
掛川市 平成30.1.23
伊豆の国市 平成30.7.11
下田市 平成30.11.13
岐阜県 高山市 平成21.1.19
恵那市 平成23.2.23
美濃市 平成24.3.5
岐阜市 平成25.4.11
郡上市 平成26.2.14
石川県 金沢市 平成21.1.19
富山県 高岡市 平成23.6.8
愛知県 犬山市 平成21.3.11
大洲市 平成24.3.5
名古屋市 平成26.2.14
岡崎市 平成28.5.19
三重県 亀山市 平成21.1.19
明和町 平成24.6.6
伊賀市 平成28.5.19
滋賀県 彦根市 平成21.1.19
長浜市 平成22.2.4
京都府 京都市 平成22.2.4
宇治市 平成24.3.5
向日市 平成27.2.23
奈良県 斑鳩町 平成26.2.14
奈良市 平成27.2.23
和歌山県 湯浅町 平成28.3.28
広川町 平成28.10.3
和歌山市 平成30.3.26
高野町 平成31.1.24
大阪府 堺市 平成25.11.22
広島県 尾道市 平成24.6.6
竹原市 平成24.6.6
岡山県 津山市 平成21.3.11
高梁市 平成22.11.22
島根県 松江市 平成23.2.23
津和野町 平成25.4.11
山口県 萩市 平成21.1.19
徳島県 三好市 平成22.11.22
高知県 佐川町 平成21.3.11
福岡県 太宰府市 平成22.11.22
添田町 平成26.6.23
宗像市 平成30.3.26
佐賀県 佐賀市 平成24.3.5
基山町 平成31.1.24
鹿島市 平成31.3.26
熊本県 山鹿市 平成21.3.11
湯前町 平成29.3.17
大分県 竹田市 平成26.6.23
宮崎県 日南市 平成25.11.22

「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」による制限

「歴史的風致維持向上計画」が認定された区域では、歴史的風致形成建造物に関する制限及び、歴史的風致維持向上地区計画の区域における土地の区画形質の変更と建築物等の建築に制限があります。

(増築等の届出及び勧告等)
第十五条 歴史的風致形成建造物の増築、改築、移転又は除却をしようとする者は、当該増築、改築、移転又は除却に着手する日の三十日前までに、主務省令で定めるところにより、行為の種類、場所、着手予定日その他主務省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画法第四条第十五項に規定する都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち主務省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、主務省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

(行為の届出及び勧告等)
第三十三条 歴史的風致維持向上地区計画の区域(歴史的風致維持向上地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他政令で定める行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 国の機関又は地方公共団体が行う行為
四 都市計画法第四条第十五項に規定する都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
五 都市計画法第二十九条第一項の許可を要する行為
六 前各号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

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