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借地借家法の新法・旧法の違いと定期借地借家契約の注意点-公正証書と38条書面

不動産投資としてアパートの経営をするかた、親が賃貸していた土地を相続し、地主として借地人との対応をすることになったかたなど、賃貸借契約のルールをしっかり知っておく必要があります。

ここでは賃貸借契約に関わる借地借家法の読み方や、解釈の仕方について解説します。

賃貸借契約のルール

賃貸借のルールとしては「民法」にも規定があります。しかし民法は “一般法” といわれ、契約当事者が互いに合意した場合は、民法の規定にしたがう必要はなく自由に「契約条項」を決めることができるのです。

ところが民法以外に賃貸借契約に関係する法律が「借地借家法」です。この法律は “特別法” といい必ず守らなければならない「強行規定」が含まれており、賃貸借契約では借地借家法に違反する契約内容は無効とされるので注意が必要です。

借地借家法は大正時代に成立した “旧法” と1992年(平成4年)8月1日に施行された “新法” があります。

やっかいなのは旧法は古い法律なので関係ないように思われますが、新法が施行される前から契約されていた賃貸借では旧法が有効となるのです。

これから賃貸事業を開始するかたは新法の内容を把握しておくとよいのですが、相続した物件や平成4年8月1日以前の契約による賃借人がいる物件を購入したかたは、旧法もよく理解しておかねばなりません。

以下に新法と旧法の違いを比較した表を掲載しますので参考にしてください。

借地契約

新   法 旧   法
存続期間 30年以上 堅固な建物は30年以上60年以下、その他の建物は20年以上30年以下、ただし期間満了前に朽廃した場合借地権は消滅する
更新期間 10年以上(最初の更新は20年以上) 堅固な建物は30年以上60年以下、その他の建物は20年以上30年以下
更新拒絶 建物がある限り正当事由が必要だが、立退料により事由は補完される 建物がある限り正当事由が必要
土地使用の法定更新 借地権消滅後に借地権者が土地使用する場合、土地所有者に異議なければ法定更新される、また建物がある場合は正当事由がなければ異議を申し立てられない
建物再築による期間延長 20年以上(再築には借地権設定者の承認が必要) 堅固な建物は30年その他の建物は20年(土地所有者の遅滞ない異議がなければ)
更新後の建物滅失 更新後に建物が滅失したとき借地権者は地上権の放棄または賃貸借の解約ができ、借地権者が承認を得ず再築したとき借地権設定者は地上権の消滅または賃貸借の解約ができる
対抗力 登記がなくとも土地の上に登記した建物を所有している場合、第三者への対抗力がある 登記がなくとも土地の上に登記した建物を所有している場合、第三者への対抗力がある
地代増減請求権 請求権を有す 請求権を有す
借地権設定者の先取特権 地上権または土地の賃貸借登記により、弁済期の到来した最後2年分の地代に先取特権を有す 地上権または土地の賃貸借登記により、弁済期の到来した最後2年分の地代に先取特権を有す
建物買取請求権 契約更新がない場合、借地権設定者に買取り請求することができる 契約更新がない場合、借地権設定者に買取り請求することができる
自己借地権 認められる
強行規定 存続期間、更新、再築、解約、対抗力、買取請求権、条件変更、増改築、再築、譲渡、転貸に関し借地権者に不利な特約は無効 存続期間、更新、転貸、条件変更、賃借権譲渡に関して借地権者に不利な定めは禁止
17条以降省略 14条以降省略

借家契約

新   法 旧   法
法定更新 期間終了1年から6ヶ月前に更新しない又は条件変更の通知がなければ契約は更新する、通知をしても賃借人が継続使用する場合は契約は更新する 期間終了1年から6ヶ月前に更新しない又は条件変更の通知がなければ契約は更新する、通知をしても賃借人が継続使用する場合は契約は更新する
賃貸人からの解約 賃貸人が解約の申入れを行う場合は申入れから6ヶ月後に契約は終了するが、賃借人が継続使用する場合は正当事由がなければ解約できない、立退料により正当事由は補完される 賃貸人が解約や更新拒絶の申入れを行う場合は正当事由がなければならない
賃貸借期間 1年未満の契約は期間がないとみなす 1年未満の契約は期間がないとみなす
対抗力 登記がなくても引渡しを受けていればその後物権を得た者に対抗できる 登記がなくても引渡しを受けていればその後物権を得た者に対抗できる
借賃増減請求権 請求権を有す 請求権を有す
造作買取請求権 賃貸人の同意を得た造作は買取り請求できる 賃貸人の同意を得た造作は買取り請求できる
居住用建物の承継 居住用建物の賃借人が死亡した場合、相続人ではない内縁者などの同居人は賃借人の権利義務を承継できる 居住用建物の賃借人が死亡した場合、相続人ではない内縁者などの同居人は賃借人の権利義務を承継できる
強行規定 更新、解約、期間、転貸、借地上の賃貸借に関し賃借人に不利な特約は無効 更新、解約、期間、転貸に関し賃借人に不利な特約は無効

地上権や賃借権は土地や建物を借りる人の権利が、手厚く保護されるしくみになっています。賃貸人からの契約解除や更新拒絶は簡単にできません。そのため「立退き料」が必ず必要になるのです。

「6ヶ月前に通告すると契約の解除ができる」と思い込んでいる大家さんがいますが、そんなことはありませんので覚えておきましょう。

借地借家法にもとづく定期賃貸借

新法には期限が来たら契約を終了させることができる「定期賃貸借」に関する規定ができました。それぞれの内容を確認しておきましょう。

定期借地契約

存続期間 存続期間を50年以上とする場合は強行規定にかかわらず、契約の更新や建物築造による期間延長および買取請求ができないことの特約を設けることができ、特約は公正証書などの書面による
事業用定期借地 事業用の建物所有を目的とし存続期間が30年以上50年未満の場合は強行規定にかかわらず、契約の更新や建物築造による期間延長および買取請求ができないことの特約を設けることができる
事業用の建物所有を目的とし存続期間が10年以上30年未満の場合は第3条~第8条(借地権の存続期間、借地権の更新後の期間、借地契約の更新請求等、借地契約の更新拒絶の要件、建物の再築による借地権の期間の延長、借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)、第13条(建物買取請求権)、第18条(借地契約の更新後の建物の再築の許可)は適用しない
事業用定期借地契約は公正証書による
建物譲渡特約付借地権 存続期間10年以上30年未満の契約を除き、30年以上経過した建物を借地権設定者に譲渡することにより借地権を消滅できる
建物の譲渡により借地権が消滅した場合、借地人からの請求により建物の使用を継続することができ、賃借権残存期間に相当する期間の賃貸借をしたこととする
建物の借賃は裁判所の決定によるか、定期借家契約の締結による条件にしたがう

重要なポイントは、事業用定期借地契約は「公正証書」にしなければならないことです。

定期借家契約

更新 公正証書など書面による契約では更新のないことの特約ができ、1年未満の存続期間にも適用される
契約期間で終了し更新しない旨を記載した書面にて、事前に賃貸人が賃借人に説明しなければならない、この説明をしない場合は更新しない旨の特約は無効となる(38条書面
存続期間が1年以上の契約では、期間満了1年前から6ヶ月前の期間内に、賃借人に期間満了の通知をしなければならない、通知期間経過後に通知した場合は通知したときから6ヶ月経過後に契約は終了する
賃借人が期間途中で解約する場合は申入れから1ヶ月後に終了するが、200平方メートル未満の居住用の建物であり、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情の場合に限る

重要なポイントは、契約書・重要事項説明書とは別に、事前に書面で「更新しない旨を記載し期限が到来したら契約が終了する」ことを、賃貸人が賃借人に直接説明しなければならないことです。この書面を「38条書面」といいます。

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