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請負契約と売買契約との違いによって異なる契約条項の内容

住宅を取得する場合に、不動産会社や建設会社と契約を交わしますが、契約する対象や内容によって「工事請負契約」の場合と「不動産売買契約」になる場合があります。二つの契約の方法にはどんな違いがあるのか、まとめてみました。2020年から施行される改正民法にもすこしだけ触れています。

請負契約と売買契約の違いを民法から調べてみる

契約の目的や対象によって契約の方法が変わりますが、その理由は準拠する法律が異なるからですが、法律の基本になっている民法からまず見ていきます。

民法には「請負契約」と「売買契約」についての規定があります。それぞれの契約の方法について民法ではどのように定められているか見ていきます。

請負契約に関する民法の定め

“請負”という言葉を民法第632条では次のように定めています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

ポイントは仕事を完成することを約しているところです。
つまり請負をした建設業者は、工事を途中で“辞めます”とは言えないわけです。
ここが、同じく仕事を頼んだり頼まれたりする時の“委託”とは違う点です。

委託は途中で仕事を中止することができる

契約には必ず契約解除に関する規定がありますが、“請負”は工事を請け負った業者から契約を解除することはできません。
注文する建て主からは契約解除することはできます。ただし簡単に解除できるわけではありません。注文者からの契約解除の規定は第641条に定めがあります。

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

ポイントは業者が蒙る損害を賠償して契約の解除をすることです。
工事業者は工事を完成することによって、工事代金を全額受け取り必要な経費や仕入れ・外注費を支払った残りを“利益”として得ることが出来るのですが、工事を途中で解約されると予定していた“利益”を得ることができません。
そこで、注文者は工事業者が得るはずだった“利益”分の金額を、損害賠償として支払うことにより契約解除できるわけです。

注文者が契約を解除する理由が、工事業者に責任があることであっても注文者は損害賠償しなければならない

売買契約に関する民法の定め

“売買”については民法第555条で次のように定めています。

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

売買は財産権の移転ですので、住宅の売買は所有権の移転を意味します。

売買契約にも契約解除に関する定めがあり、不動産売買に係わるいくつかの条文があります。

  • 第542条:定期行為の履行遅滞による解除権
  • 第543条:履行不能による解除権
  • 第557条:手付

売買契約の解除については、売主、買主双方に解除権があり、解除の場合の金銭的な面も契約書に明記します。

国土交通省が管轄する建設業法と宅地建物取引業法

民法には上に書いたポイント以外にも、瑕疵担保責任についての規定がありますが、不動産や住宅に係わる瑕疵担保責任については、別途、国土交通省が所管する「建設業法」と「宅地建物取引業法」、および「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって、より厳しく詳細な瑕疵担保責任に関する規定があります。

工事請負契約と建設業法

建設業法では工事請負契約は書面にしなければならないと定めています。
契約そのものは書面でなく口頭でも成立しますが、建設業法では契約書は書面にすることが義務付けです。

さらに契約書に必ず記載しなければならないことが決まっています。(建設業法第19条)

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  5. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  6. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  7. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  8. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  9. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  10. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  11. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  12. 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  13. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  14. 契約に関する紛争の解決方法

細部に至るまで契約書で明確にする必要があり、変更が生じた場合には変更事項を書面にし、双方署名押印することも決まっています。

不動産売買契約と宅地建物取引業法

建売住宅や分譲マンションなど、工事を注文することは無く、完成した状態の物件または完成予定の物件を購入する場合には「不動産売買契約」を締結し、関係する法律は「宅地建物取引業法」になります。

売買契約では契約書は書面で作成するのは当然ですが、「重要事項説明書」という文書を作成し、宅地建物取引士が説明することが義務付けされています。

重要事項説明書に明記する項目は以下のようなことです。(宅地建物取引業法第35条)

  1. 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
  2. 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
  3. 当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項
  4. 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
  5. 当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
  6. 当該建物が建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
  7. (6-2)当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
    1. (イ)建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
    2. (ロ)設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況
  8. (7)代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的
  9. (8)契約の解除に関する事項
  10. (9)損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
  11. (10)第四十一条第一項に規定する手付金等を受領しようとする場合における同条又は第四十一条の二の規定による措置の概要
  12. (11)支払金又は預り金(宅地建物取引業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭(第四十一条第一項又は第四十一条の二第一項の規定により保全の措置が講ぜられている手付金等を除く。)であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう。第六十四条の三第二項第一号において同じ。)を受領しようとする場合において、同号の規定による保証の措置その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
  13. (12)代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
  14. (13)当該宅地又は建物の瑕疵かしを担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
  15. (14)その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
    1. (イ)事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
    2. (ロ)イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令

住宅の品質確保の促進等に関する法律

請負契約および売買契約において「瑕疵担保責任」についての契約条項は明記の義務があります。しかし、建設業法・宅地建物取引業法よりも厳しく瑕疵担保責任について規定したのが「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」です。

いわゆる10年保証が品確法で規定していることです。

請負契約による注文住宅、売買契約による建売住宅・分譲マンション、あるいはアパートなどの賃貸住宅として使用される共同住宅も、10年保証については請負契約、売買契約にかかわらず同じ義務が、建てた会社あるいは販売した会社には「10年保証」が義務付けされています。

契約解除に関する契約条項の違いが最大の違い

ここまで見てきて分かるように、請負契約と売買契約との大きな違いは「契約解除」に関することです。
請負契約では注文者は簡単に契約を解除できません。また、請負業者には契約解除の権利さえありません。

一方、売買契約では「違約金」が契約で明記され、違約金の支払いをもって売主・買主双方に契約解除の権利があります。一定期間以内であれば、手付金の放棄または倍返しによって契約解除が可能です。

それに対し、請負契約では、工事会社に工事中の様々な不手際やミスの連発など、信頼関係を失うようなことがつづいても、注文主に有利な状態で契約を解除することはできません。一生の大切なマイホームを後悔だらけの思い出にしてしまう可能性があっても、損害賠償を負って契約を解除するしか方法は無いのです。

工事を依頼する業者選びがいかに大切か、改めて思い知らされます。

2020年の民法改正によって変わるところ

2020年4月1日からは120年ぶりに改正された民法が施行されます。

改正民法で大きく変わるところが「瑕疵担保責任」です。

建売住宅や分譲マンション、あるいは注文住宅では、構造上主要な部分と雨漏れに関する部分には10年間の瑕疵担保責任が義務付けされています。
ところが「瑕疵担保責任」という言葉が民法から無くなり、「契約不適合責任」という言葉に変わります。

その関係で請負契約書および売買契約書では「瑕疵担保責任」で対象となっていた「隠れた瑕疵」が「契約の内容に適合しないもの」となり、ニュアンスとしては範囲が広くなり、契約不履行に対しては「損害賠償」と「契約解除」に加えて「追完請求」や「代金減額請求」が可能となります。

欠陥住宅を作られたとか買わされたという時の対抗手段が増えそうな感じがします。
参照 》》 売買契約に関連する民法改正のポイント

一方、品確法では新たに“瑕疵”という言葉を定義して、これまでと同様に「瑕疵担保責任」という表現を続けるようです。