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所有権の取得による混同で消滅する権利と消滅しない権利

所有権
民法には「混同」という少しわかりづらい言葉があります。
参照:民法179条

『公私の混同』などが一般的な使われ方ですが、同じ人物が法律的に対立する2つの地位になることを言います。
たとえばAさんが所有する土地に、Bさんが貸金保全のために抵当権を設定します。後にBさんは売買によりAさんから所有権を移転した場合、Bさんはその土地の所有権と抵当権を保有する状態が「混同」です。民法ではこのときBさんの抵当権が消滅すると規定しています。

この「混同」に関わるテーマを試験問題としたのが、令和6年宅建試験の[問6]です。
ここではこの問題をテーマにして「混同」について掘り下げていきます。

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混同によっても消滅しない権利とは

民法179条の第1項には、混同になった場合は他の物権は消滅すると規定していますが、ただし書きあり次のように書かれています。

ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

引用:民法第179条

不動産登記法で定めている権利は次のとおり10個あります。

  1. 所有権
  2. 地上権
  3. 永小作権
  4. 地役権
  5. 先取特権
  6. 質権
  7. 抵当権
  8. 賃借権
  9. 配偶者居住権
  10. 採石権

引用:不動産登記法第3条

一般的に「混同」が生じるケースとしては、地上権者や抵当権者がその目的としていた不動産の所有権を取得したときにおきます。

混同が生じたとき第三者の権利の目的として、他の物件が登記されていた場合には、混同が生じた原因の物権は消滅せず以後も有効であるというのがただし書きの意味です。

ではなぜ第三者の権利が登記されている場合、混同となった物権でも消滅しないのか? 具体的な事例を想定して考えていきます。

土地の所有権が移転されても物権が消滅しない事例

事例-1

  1. Aさん所有の土地にBさんは地上権を設定し住宅を建てた
  2. BさんはC銀行から借入をしたため土地に設定した地上権に抵当権が設定された
  3. BさんはAさんからその土地を購入したため地上権は必要なくなったが、C銀行の抵当権が地上権に設定されている

このような場合、Bさんが土地の所有権を得たときには「混同」の状態なので、本来は地上権が消滅します。ところが「ただし書き」の適用により、C銀行の抵当権が地上権に設定されているため地上権は消滅はしません。

事例-2

  1. AさんはBさんから借金をした
  2. Bさんは貸し金の担保としてAさん所有の土地に抵当権を設定した
  3. AさんはCさんから借金をした
  4. Cさんは貸し金の担保としてAさん所有の土地に2番順位の抵当権を設定した
  5. Bさんは譲渡によりAさんの土地を取得した

このような場合、Bさんの抵当権は消滅せず抵当権1位の立場を維持し、Cさんも抵当権2位の立場は変わらずAさんへの債権も残ったままになります。

事例-3

事例-2と同様の抵当権設定がされている場合に、Bさんが相続によりAさんの土地の所有権を取得すると、事例-2とは結果が異なります。

Bさんが相続するとAさんへの被担保債権は消滅するので、抵当権は付従性により消滅します。そのため2番抵当権は1番に変更されます。

混同により第三者が設定した権利の消滅-まとめ

令和6年の宅建試験[問6]は、地上権を設定した土地に第三者が抵当権を設定し、後に地上権者に所有権が移転した場合の地上権消滅の有無に関するものです。

4つの答が記載されており、その中に正しい答えがいくつかあるか? という設問でした。

4つの答えすべてが「地上権は消滅する」と書かれていますが、所有権移転の原因が次の4つのパターンであり、すべて「ただし書き」が適用されるので、正しい答えは「なし」が正解です。

  1. 売買契約
  2. 単独相続
  3. 代物弁済契約
  4. 贈与契約

不動産に関わる債権の混同も重要

不動産の物権に関する混同について解説してきましたが、混同は「債権」についても同様なことが言えます。

民法第520条では債権の混同について定めています。

債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
引用:民法第520条

不動産に関する債権とには次のようなものがあります。
売買契約においては、売主に代金を受取る権利があり、買主には契約対象物の引渡しを受ける権利があります。

賃貸借契約においては、貸主に賃料を受取る権利があり、借主には対象物を使用収益する権利が債権です。

金融機関が保証委託契約に基づく代位弁済を行ったのち、抵当権を行使して差押えなどを行うのは、求償債権に基づくものです。

これらの債権には相手方に必ず行うべき債務がありますが、この債務と表裏一体の債権が同一人物に帰属することを「混同」と言います。

AさんがBさんにお金を貸しましたがBさんは返済ができず、Aさんに不動産を譲渡しました。
Aさんにあった債権は、不動産の譲渡代金を支払うという債務を負ったため、混同により相殺され貸金債権は消滅します。

不動産に関わる混同には、物権と債権が複雑に関係する場合があるので、よく整理して認識する必要があるでしょう。

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