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営業保証金の供託と保証協会への分担金で還付金は変わるのか?

法務局に供託

宅地建物取引業を営む場合には、営業保証金を主たる事務所を管轄する供託所(法務局)に供託しなければなりません。供託する営業保証金は高額になり、規模の小さな事業者には負担が重く、営業保証金に代わる弁済業務保証金の制度があります。

どちらも不動産取引において取引する当事者に損害が生じた場合に、その損害を補填するため保証金を準備するものです。では、営業保証金と弁済業務保証金では、宅建業者が負担する金額は大きく違いますが、損害に対する保証額はどうなるのでしょう?

営業保証金に関わる宅建試験のテーマも多く、ここでは令和6年の宅建試験で出題された[問27]を例題にして、営業保証金の制度について解説します。

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営業保証金制度

宅建業の「営業保証金」は不動産取引の当事者に、取引過程において何らかの損害が生じた場合、その損失を保証するためあらかじめ供託するものです。

ただし損失保証の対象になるのは一般個人や法人であり、宅建業の免許を受けた事業者は対象外となります。

営業保証金の金額は宅地建物取引業法施行令第2条の4で、次にように定められています。

  • 主たる事務所は1,000万円
  • その他の事務所は事務所ごとに500万円

出典:宅地建物取引業法施行令第2条の4

営業保証金の供託は現金のほか、国債、地方債、その他の国土交通省令で定める有価証券により充当することができます。ただし有価証券は額面価額が次のようになります。

  • 国債は額面価額の100%
  • 地方債は額面価額の90%
  • その他の債権は額面価額の80%

出典:宅地建物取引業法施行規則第15条

営業保証金を供託したのち事務所の移転があり、供託所が変更になった場合はすでに供託した営業保証金の「保管替え」をすることができます。ただし保管替えができるのは現金で供託した場合であり、有価証券を供託した場合は移転先の法務局に新たに供託をし、移転前の供託金については「営業保証金の取戻し(宅建業法第30条)」手続きにより取り戻すことができます。

参照:宅建業法第29条、30条

弁済業務保証金制度

弁済業務保証金制度は国土交通省が指定する「宅地建物取引業保証協会」が行う制度であり、宅地建物取引業保証協会については宅建業法第64条の2に定めがあります。

参照:宅建業法第64条の2

現在、指定を受けた保証協会は次の2法人です。

弁済業務保証金制度とは、宅建業免許に必要な「営業保証金」を1事業者ごとに供託するのではなく、宅建取引業者が取引業保証協会の社員となり、取引業保証協会経由で弁済業務保証金を供託する方法です。

したがって、宅建事業者は「弁済業務保証金分担金」を取引業保証協会に支払うことにより、営業保証金を供託したのと同様の位置づけになります。

弁済業務保証金分担金は営業保証金より大幅に低額となり、次のようになっています。

  • 主たる事務所は60万円
  • その他の事務所は事務所ごとに30万円

令和6年宅建試験[問27]の解説

問27は4つの記述から正しいものを選択する問題です。

1.は、主たる事務所の移転による営業保証金の供託に関する記述ですが、事務所の移転では「保管替え」を行うことができます。記述の中に「金銭のみをもって」とありますので、保証金全額の保管替えが可能です。
記述には「新たに供託しなければならない」とあることから、間違いであることがわかります。

2.は、宅建業者の従業員が顧客を乗用車に乗せて現地案内したときに、交通事故により顧客に怪我をさせた場合の損害補償に対し、営業保証金の還付ができるとの記述ですが、交通事故は不動産取引とは関係がないので間違いです。

3.は、営業保証金を供託する有価証券に関する問題です。国債証券は額面の90%、地方債は額面の80%と記述されていますが、それぞれ100%、90%が正しく、この記述は間違いです。

4.は、新たに従たる事務所を新設する場合の営業保証金についてです。供託する供託所は主たる事務所を管轄する供託所になるので正しい記述になり、問27の正解は[4]となります。

営業保証金の還付と弁済業務保証金の還付

不動産取引で取引当事者に損害が発生した場合、営業保証金または弁済業務保証金の還付が行われ、当事者への損害を補填することが可能です。

ただし損害が発生した場合、一義的に損害への賠償は取引に関わった宅建業者が負いますが、宅建業者では損害額のすべてを支払いできない場合に、損害を受けた当事者が、供託所に営業保証金の還付または済業務保証金還付の請求を行います。

保証される金額には限度があり、営業保証金の額が上限となります。損害に対する補償責任のある宅建業者が「弁済業務保証金分担金」を支払っている場合であっても、上限額は「営業保証金」の額になるので主たる事務所の場合1,000万円となります。

営業保証金または弁済業務保証金から還付が行われた場合、当該の宅建業者は、供託する営業保証金または弁済業務保証金が不足するので、不足した分につき、新たに供託金または弁済業務保証金に関する充当金の支払いが必要です。

参照:宅建業法第27条、28条

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