仲介手数料は宅建業者の収入の基盤です。仲介手数料の計算は売買取引と賃貸借取引とでは計算方法が異なり、さらに売買取引では建物が取引に含まれる場合は消費税に注意が必要です。
この記事では令和6年に出題された宅建試験の[問28]から、媒介報酬についての解説をします。
令和6年宅建試験の[問28]の媒介報酬計算
令和6年宅建試験の[問28]は、3つの記述から宅建業法の規定に違反していない記述の組合せを選ぶものでした。
3つの既述の要点は以下のとおりです。
- 居住用建物の貸借取引に関する媒介報酬
- 事業用建物の貸借取引に関する媒介報酬
- 土地付建物の売買取引で遠隔地の物件に関する媒介報酬
貸借取引の媒介報酬規定
貸借取引の媒介報酬は宅建業法第46条により、国土交通大臣の告示により決定されます。
参照:宅建業法第46条
最新の媒介報酬規定は「令和6年6月21日国土交通省告示第949号」に記載されており、報酬の上限額を次のように定めています。
- 居住用建物の貸借取引に関する媒介報酬額合計は消費税額を除いた賃料の1か月分(消費税別)、かつ依頼者片方から受取る報酬額は依頼者からの承諾を得ていない場合は0.5か月(消費税別)
- 非居住用建物の貸借取引に関する媒介報酬額合計は消費税額を除いた賃料の1か月分(消費税別)
- 非居住用建物の貸借取引で権利金の授受がある場合は、権利金の額を売買代金と見なして売買取引の報酬規定による
- 長期の空き家の貸借の媒介報酬
借主から受取る報酬額が賃料の1か月分以内(依頼者の承諾を得ていない場合は0.5か月)の場合、双方からの媒介報酬額合計は消費税額を除いた賃料の2か月分(消費税別)
以上の規定に基づき令和6年宅建試験の[問28]の記述を検証すると次の結論となります。
- 居住用建物の貸借取引に関する媒介報酬
賃料12万円の居住用貸借取引では、承諾を得ていないので一方から受け取れる報酬額上限は6万円となり、ここでの記述は「規定違反」となります。 - 事業用建物の貸借取引に関する媒介報酬
賃料10万円の非居住用貸借取引は報酬額の合計上限は10万円であり、権利金90万円については、一方から売買に関する報酬として4.5万円、両方からは9万円の請求が可能であり、貸借・売買両取引を合わせると合計額は19万円となるが、記述は貸主・借主双方から5万円ずつとなっており規定に合致しています。
売買取引の媒介報酬規定
売買取引の媒介報酬規定も「令和6年6月21日国土交通省告示第949号」に記載されており、報酬の上限額を次のように定めています。
- 売買代金の200万円以下の部分が5%(消費税別)
- 売買代金の200万円超400万円以下の部分が4%(消費税別)
- 売買代金の400万円超の部分が3%(消費税別)
- 売買代金の400万円超の部分が3%(消費税別)
- 売買代金に建物の消費税額は含まない
- 低廉な空家等の売買で代金が800万円までの媒介報酬上限額は30万円(消費税別)
以上の規定に基づき令和6年宅建試験の[問28]の記述を検証すると次の結論となります。
問題の記述では、売買代金が3,500万円で内訳は、土地代が2,400万円、建物が消費税込みの1,100万円です。建物から消費税を除いた価額は1,000万円なので、媒介報酬を計算する売買代金は3,400万円となり、一方からの媒介報酬額の上限は118万8千円(消費税含む)となります。
記述では売主と買主からそれぞれ110万円を受領したとあり、さらに遠隔地のための現地調査実費として9万円を売主から受領したとあり、記述は規定の上限に納まっています。
令和6年宅建試験の[問28]の正解
以上のように令和6年宅建試験の[問28]は
- 居住用建物の貸借取引に関する媒介報酬
- 事業用建物の貸借取引に関する媒介報酬
- 土地付建物の売買取引で遠隔地の物件に関する媒介報酬
についての記述がありましたが、№2と№3が正しい記述であったため、正解は[2]という結果でした。
媒介報酬(仲介手数料)とインボイス
インボイス制度の開始により、宅建業者は課税業者と免税業者に区分されるようになりました。
免税業者が受取る仲介手数料は「税抜金額」が原則です、ただし仕入に係わる消費税分を転嫁できることが認められており、その金額は税抜金額の4%になります。
インボイス制度前には、免税業者であっても消費税を上乗せして受領するケースがありましたが、上記のとおり税抜金額の4%までが加算できる金額となるので注意が必要です。
出典:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成13年国総動第3号)新旧対照条文 【令和6年7月1日施行】
売主免税事業者の場合の消費税
インボイス制度が導入されたことにより、課税業者か免税業者かの区分が明確になりました。そのため、免税事業者が事業用の建物を売却した場合、消費税は免税なので建物価格に消費税は含まれません。
しかし免税事業者であっても、課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年には課税事業者になるので、翌々年の売上には消費税が課税されます。また課税売上高が1,000万円以下だとしても、翌年の特定期間(事業年度の前半6か月)に1,000万円を超える売上になると翌々年は課税事業者となります。
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