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帰責性のない売主には損害賠償請求ができない

損害賠償
不動産の売買契約において、損害賠償に関する契約条項は複数あります。損害賠償責任については民法による規定との関係があり、正確に理解しておく必要があります。
とくに売主・買主に対する帰責性によっては、損害賠償請求ができない場合もあるので注意が必要です。

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契約条項に定める損害賠償の種類

一般的な売買契約書における損害賠償の契約条項は次のとおりです。

  • 付帯設備の故障や不具合に対する損害賠償(一般的に売主は賠償責任を負わないと明記することが多い)
  • 契約解除に伴う違約金
  • 契約不適合に対する損害賠償

この中で損害賠償請求を行うにあたり、契約不適合による場合は損害賠償以外に契約解除権、履行の追完請求権、代金減額請求権が民法において定められています。

重要なのは、契約の目的不動産に契約不適合が生じた理由が、売主の責任によるものか否かです。契約不適合が売主の責任とはならないケースでは、損害賠償請求の行使ができない場合があります。

このような視点から作成されているのが、令和6年の宅建試験の[問10]です。
設問は、契約不適合部分のある売買契約において、その不適合の原因に売主や買主の帰責事由がない場合、買主が行使できない権利について問うものです。

この問題を解くには、次の4つの権利についての適用要件を正しく理解しておく必要があります。

  • 損害賠償請求権
  • 契約解除権
  • 履行の追完請求権
  • 代金減額請求権

損害賠償請求権を行使できる要件

契約不適合があった場合に買主が売主に対して損害賠償請求をするには、民法第415条「債務不履行による損害賠償」の規定と、民法564条「買主の損害賠償請求及び解除権の行使」によります。

契約不適合は売主の債務不履行にあたるので、契約解除の可能性が高く損害賠償請求権も生じます。ただし契約不適合の理由が、取引上の社会通念に照らして売主の責任とはならない場合は請求ができません

参照:民法第415条
参照:民法第564条

不動産取引上の損害賠償については、契約不適合による場合以外にも契約解除に伴うものがあります。売主・買主が契約締結後に事情が変化し、売買取引を都合により取りやめる場合があり、そのためあらかじめ「違約金」を決め、売主・買主双方が契約解除権の留保を行っています。

この違約金が損害賠償金に相当しています。この場合は売主・買主双方に対する帰責性は問われません。

契約解除権を行使できる要件

契約の解除は双方の合意によって行う「合意解除」、あらかじめ決めた約定により行う「約定解除」、そして法律に基づいて行う「法定解除」があります。

不動産取引における手付解除は「約定解除」の一種であり、違約金を支払い解除する「違約解除」も「約定解除」と捉えることができます。また、契約不適合により解除する場合は「法定解除」の一種と捉えることになるでしょう。

合意解除と約定解除は、解除の意思表示やその有効性に疑問が生まれることはないですが、契約不適合による解除は法的な手続きが必要になり、権利行使の要件については入念に検討する必要があります。

契約不適合があった場合、まず買主は売主に対し民法第562条の「履行の追完請求」を行います。売主は契約不適合部分を修補し、契約に適合する状態にしてから引渡しを行います。
参照:民法第562条

売主が追完請求に応じない場合や応じる見込みがない場合、あるいは追完を拒絶するなどのような場合は、民法第563条の「買主の代金減額請求権」を行使し、不適合部分に相当する代金の減額を請求します。
参照:民法第563条

履行の追完請求など売主に対し履行の催告を行っても履行されない場合、民法第541条による「解除権」が生じるので買主は契約解除することができます。ただし不履行が社会通念上軽微な場合は、解除権の行使ができないので注意が必要です。
参照:民法第541条

以上のように、契約不適合による契約解除は「履行の追完請求」や「代金減額請求権」により、契約不適合が解消されない場合に行使できる権利ですが、軽微な契約不適合には適用できません

契約不適合となる売買契約において買主が行使できない権利-まとめ

宅建試験の令和6年の[問10]では、売主に帰責事由のない契約不適合のある売買契約で、買主が行使できない権利のみを記載した答えを4択から選ぶものです。

記載された権利は

  • 履行の追完請求権
  • 損害賠償請求権
  • 代金の減額請求権
  • 契約の解除権

の4つですが、売主に帰責事由がないため行使できないのは「損害賠償請求権」であり、他は行使できる権利のため正しい答えは回答-4になります。

また問10の設問には「売主及び買主のいずれの責めにも帰することができない事由」といった文言があり、契約不適合の理由が買主に帰責性がある場合も、損害賠償請求ができないので注意が必要です。

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