重要土地等調査法の目的とその課題

重要土地調査法(正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」)は、令和3年(2021年)6月16日に成立し同23日に公布、令和4年9月20日から施行した法律です。

千歳基地

重要土地調査法の目的

重要土地調査法を所管するのは「内閣府」であり、我が国の安全保障上の観点から防衛施設等の機能が阻害されることのないよう、安全保障政策上重要な施設周辺の土地に対する規制を目的としたものです。

規制の内容としては一定の土地に対して、利用状況の調査を実施することを可能にします。

一定の土地は国が指定し「注視区域」とし、とくに重要な施設等は「特別注視区域」とし、売買などの権利変更がある場合は事前の届出が必要となります。

また所有者等がこの法律に違反した場合は刑事罰が科される重要な法律になっています。

対象となる土地

重要土地調査法の対象となるのは以下の施設周辺やエリアです。

  • 防衛関係施設
  • 海上保安庁の施設
  • 原子力関係施設
  • 自衛隊が隣接するか自衛隊も使用する空港
  • これら施設敷地周囲からおおむね1kmの範囲
  • 国境離島と離島区域

対象となる施設や離島から内閣府告示により個別に指定します。
「注視区域」および「特別注視区域」の指定状況は以下で確認できます。

  1. 注視区域
  2. 特別注視区域

重要土地調査法制定の経緯

重要土地調査法の制定は2014年1月に、中国資本が航空自衛隊千歳基地の隣接地約8haを買収したことがキッカケと言われます。

また我が国は島国でありその島嶼は14,125あるとされています。北海道・本州・四国・九州・沖縄本島を除くと14,120が離島であり、そのうち有人離島は256、無人離島が13,864島となります。(国土交通省/日本の島嶼の構成-令和5年2月28日現在)

離島は排他的経済水域(EEZ)を構成する拠点であり、離島の利用状況や所有に関する事項はEEZ保全に欠かすことができず、さらには我が国の安全保障に重要な意味を持っています。

重要土地調査法の制定は前述したように外国資本などが、日本の国土を買収することに対する規制の必要が生じたからです。

現在、外国人や外国資本が日本の土地を購入することに対する制限はありません。しかしまったく自由に国内の土地の売買を認めてしまうと、安全保障上重要な施設の隣地が外国に買われ、安全保障上の機能を阻害されることを防ぐことはできません。

そのためある程度の規制を設けることにより、外国資本などによる土地の買収を抑制するのが重要土地調査法の目的と考えられます。

重要土地調査法の課題

外国資本や外国人による日本の土地買収について、諸外国と同様に「外国人の土地所有を禁止する」かあるいは制限する法整備が求められるのですが、これについては障害があります。

1994年、日本はWTOのサービス貿易一般協定(GATS)に加盟しました。

この時WTOの国際ルールとなっている「内国民待遇規定」に関し、外国人の土地所有に対しては留保すべきところを受け入れてしまったので、このルールが適用されるため外国人の土地所有を禁止できないのが現状です。

重要土地調査法は土地の所有者情報や利用状況を調査できる権限と、利用規制を設け安全保障機能を阻害する利用方法については中止を勧告・命令できる権限があります。

利用中止に対する代償として、国は損失の補償または土地の買入れを申出できるとされています。また特別注視区域の売買等は届出が義務化されており、購入者や利用目的により国は買取りするとされています。

外国人または外国資本による日本の土地買収に対し、重要土地調査法がどこまで有効性を確保できるのか今後の課題と言えるでしょう。

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