引渡し後に解体される建物がある売買契約と重要事項説明の注意点

アスベスト

重要事項説明書に記載される項目に「建物についての石綿使用調査結果の記録に関する事項」があります。

この項目は売買対象物件の建物について「石綿使用調査の記録」の有無を説明するものであり、調査を行った物件については調査の結果について概要を説明し、調査を行っていない場合や不明の場合は、その事実を説明するものです。

「備考欄」にはアスベストが使用されている可能性について説明し、使用されている場合には解体工事にさいし、買主が費用負担をしなければならない可能性について説明することが必要です。

アスベスト規制強化の背景

2022年4月1日施行の改正された「大気汚染防止法」により、解体工事着手前にはアスベスト調査実施が義務化されています。

建物に使用されたアスベストの飛散危険性により、レベル1~3まで分類されています。

レベル1は吹付石綿などの発じん性が著しく高いもの
レベル2は断熱材などの発じん性が高いもの
レベル3は窯業系サイディングや化粧スレートなど成型板や塗材などで発じん性が比較的低いもの

住宅に比較的多く使われるサイディングや吹付タイルなどの塗料も対象となっており、ほとんどの建物は調査が必要になると考えておかなければなりません。

アスベスト規制強化の影響

上記のように、ほとんどの建物が解体時にアスベスト調査が必要になり、売買により引渡しを受けた買主が、解体時点で調査費用や調査時間、さらに調査結果によっては解体工事費用の増額が必要になるケースが生じます。

売買契約時の重要事項説明では「石綿使用調査記録は無し」との説明だけに終わっている場合、買主にとっては「契約違反」や「説明義務違反」と捉えるケースも考えられトラブルの原因となってしまいます。

このようなトラブルを防ぐには、仲介業者から売主にアスベスト調査の実施を勧める、あるいはアスベスト使用の可能性について説明し、買主の費用負担増や解体工事期間の延長など懸念されることがらについて、しっかりとした説明が必要になります。

東京都宅建協同組合では特約・容認事項文例集を用意しており、状況に応じて修正するなどして活用すべきでしょう。

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