所有者不明不動産の悩みを解決する方法

所有者がどこにいるのかわからない不動産は、全国でおよそ2割存在すると言われています。所有者不明土地は社会問題ともなる「空き家」増加につながり、所有者不明不動産を防止するための法整備が行われています。

ここではそのような所有者不明不動産を購入しようとする場合と、共有不動産で共有者が不明となった場合の対応方法、そして隣地などに管理不全の不動産がある場合の対応などについてお伝えします。

空き家

所有者不明の不動産購入

どうしても購入したい不動産があり、所有者に連絡を取ろうとしたが登記上の住所には住んでいない場合、どのような方法があるのでしょう。

所有者不明不動産の種類

不動産の所有者が不明な場合といっても次の3つのケースがあります。

  • 所有者本人:所有者が登記簿記載の住所地に居住しておらず所在が不明
  • 一部の共有者:共有者の中に所在不明者がいる
  • 相続人:登記簿上の所有者は亡くなっており相続登記されていないため所有者が不明

以上3つのケースごとに不明所有者の特定方法について紹介します。

所有者本人が不明

所有者が登記上の住所地に居住していないケースは少なくありません。ただし住所変更登記が義務化される令和8年以降は少なくなると思われます。

住所変更登記が未了の場合は所有者の移転先住所を調べる必要があります。しかし他人の住民票を取得することは出来ないため、弁護士や司法書士などに依頼し「職務上請求」により取得する方法になります。

ただし弁護士や司法書士が住所の調査のみを目的とした業務は受けない可能性もあり、目的としている所有者との間での何らかの交渉について委任するなどの必要があるでしょう。たとえば買取り交渉を弁護士に依頼するなどです。

一部の共有者が不明

複数の所有者がいる共有物件の場合、共有者の中に連絡の取れない人がいるケースがあります。

居住地が変わり住所変更登記をしていないか、住民登録はそのままで消息不明になっている場合も考えられます。

共有者それぞれが血縁関係にある場合は、住民票や戸籍附票から移転先の住所を調べることが可能です。また血縁関係がない場合であっても、不動産の共有者に連絡をしなければならないといった正当な理由があり、地方自治体が承諾した場合は移転先住所を確認することが可能です。

どうしても共有者が消息不明や移転先住所が不明な場合には、次の方法で売主に対応してもらうことが可能です。

  1. 所在等不明共有者持分取得制度
    所在不明な共有者がいる場合、その持分に相当する金額を供託し、他の共有者が買取りできる裁判手続き
  2. 所在等不明共有者持分譲渡制度
    所在不明な共有者がいる場合、その持分を他の共有者の持分と共に譲渡する裁判手続き

ただし、いずれの方法も不明な共有者が相続により所有権を取得している場合は、相続開始から10年経過していることが必要です。

相続人が不明

登記上の所有者が亡くなっており相続登記がされていない場合、購入したい希望があっても相続人に連絡を取ることができません。

亡くなった登記上の所有者の戸籍を調べ、相続人と考えられる親族を確認し交渉を行いますが、ネックは他人の戸籍を調べる方法がないことです。

そこで前述の弁護士などによる「職務上請求」により相続人を調べ、売買交渉に進んでいく方法を取ります。

所有者不明不動産の処分方法

共有する不動産は複数いる所有者の誰かが所在不明になると売却ができなくなり、管理が健全に行われないと「空き家予備軍」の懸念も生まれます。

このような不動産の処分方法としては、前述したように要件を満たしていれば「所在等不明共有者持分取得制度」により、持分を取得しておくと将来の売却時にはスムースに取引を進めることができます。

あるいは「所在等不明共有者持分譲渡制度」により、第三者に自身の持分も含めて不動産全体を売却することも可能です。

一方、不明な共有者が相続開始から10年経過していないなど、所在等不明共有者持分に関する制度を利用できない場合、共有者が管理を健全に行うには物理的にできないケースもあります。

そのような場合には「所有者不明土地・建物の管理制度」を活用し、裁判所が選任した管理人が不動産を管理します。また裁判所が許可をすると売却も可能になります。

土地所有権を国庫に帰属させる制度

所有者不明とは異なりますが、相続した土地を手放して国に帰属させる方法もあります。つまり相続人全員が相続放棄により誰も相続しない場合にあっても、相続財産が清算されるまでは管理が必要であり相続財産管理人の選任が必要になります。

不動産にあっては清算されるまでの管理が健全に行われない場合、地域社会への悪影響などが懸念されます。

そこで相続を受けたのち、その不動産を国に帰属させることができるのがこの制度です。対象となるのは管理や処分に過大な費用がかからない土地であることなど、いくつかの要件があり、10年分の土地管理費相当額の負担が必要ですが相続することによる負担を取り除くには検討に値する方法です。

隣地の所有者が不明

隣地に空き家があり長期間管理がされていません。典型的な「空き家問題」のケースです。
このようなケースでは地方裁判所に申し立て管理人を選任してもらう方法があります。
詳しくは所有者不明土地ガイドブックを参照ください。

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