不動産会社が倒産したら手付金はどうなるのか

建売住宅や分譲マンションは売主が宅建業者です。中古住宅や中古マンションにも、売主が宅建業者の物件があります。申込金や契約時には手付金を支払います。支払った手付金は宅建業者が引渡しまで預かることになるのですが、もしも宅建業者が倒産した場合、手付金はどうなるのでしょう。
ここでは手付金保全と不動産会社が倒産した場合について解説します。

不動産会社は大手から中小まで様々です。上場企業もあれば地場の中小企業も建売住宅事業をやっています。
特にスポットで販売される建売住宅や、買取りした住宅をリフォームして再販する物件のほとんどは、地場の不動産会社です。
不動産会社に対して支払う手付金については規制があります。

売買契約のパターンと法律の規制

不動産業者の事業に対し規制を行う「宅地建物取引業法」は、免許を与えた宅建業者が適正かつ公正な取引を行うよう導き、主に不動産購入者の利益を保護することを目的としています。

つまり『一般消費者が不動産取引において損害を被ることの無いように、不動産業者に必要な規制を行う』ことが、暗に意図されている法律と言えるでしょう。

つまり

一般個人・法人が売主の場合は規制がないが、宅建業者が売主の場合は規制がある

不動産取引のパターンには4つあります。

  1. 売主も買主も宅建業者
  2. 売主が個人又は宅建業者でない法人で買主が宅建業者
  3. 売主も買主も個人又は宅建業者でない法人
  4. 売主が宅建業者で買主が個人又は宅建業者でない法人

それぞれのパターンで宅建業法の規制レベルが微妙に違います。

パターン1は両方とも宅建業者なので、なにかあっても自己責任よというニュアンスで法規制があります。

パターン2は購入するのは宅建業者だから、きちんと自分で判断してね、こんなニュアンスです。

パターン3は両者ともに宅建業者では無いので、仲介する宅建業者がきちっと売主・買主双方に損害が出ないようにやってね、といった規制があります。

パターン4は、最も規制を厳しくしているパターンで、プロの宅建業者に騙されないように、といろいろ心配してくれています。

この記事のテーマである「手付金を払ったけどきちんと引渡しになるのかな?」は、パターン4についての場合です。

手付金に関する法律上の規制

宅建業法では売主が宅建業者の場合、受け取る手付金に一定の規制があります。
逆に言うと、売主が宅建業者でなければ、手付金に対しての規制はありません。

まず一つ目の規制は、1000万円を超える手付金は受け取らないようにという規制です。もし1000万円を超える手付金を受け取る場合には、“手付金等の保全措置”をとるように定められています。

二つ目の規制は、売買代金に対する手付金の割合を規制しています。

  • 完成した物件は売買代金の10%まで
  • 完成していない物件は売買代金の5%まで

と規制されていますが、この割合を超える手付金を受け取る場合には、先ほどと同様に“手付金等の保全措置”をとらなければなりません。

手付金等の保全措置

  • 宅建業者の協会が行う保証
  • 銀行が行う保証
  • 保険事業者が行う保証

の3通りがあります。

買主には契約の目的物である不動産の引渡しが終わるまで、手付金の返還請求権があります。売主の事情によって契約が解除され手付金が返還される場合、なんらかの事情で手付金が戻ってこない時に、買主に手付金相当額が保証されるしくみです。

では、上に書いた規制の範囲内の手付金であれば、保全措置はまったくしなくてよいかというと、そうでもないというのがもう一つの規制です。
この規制の内容は、保全の義務はないけど、任意に宅建業者は保全措置をとることができますよ。だけど、今回は保全措置をとりませんよ、といった保全措置の「有無」について説明をしなければなりません。

保全措置の有無を説明するということは、逆に言うと『保全措置を希望すればしますよ』という意味にもなります。

かといって「保全して」と希望することは『お宅の会社は信用できないから』ということを暗に言っていることにもなるので、保全を言い出すのはなんとも微妙な感じです。

ただし、この説明については、手付金が50万円未満の場合には不要になっていますので、説明すらありません。

つまり、完成物件の場合は売買代金の10%以下、未完成の物件では5%以下、なおかつ50万円未満の手付金については保全措置はとってくれないことになります。

手付金に最低限度はない

以上、もしもの場合に手付金が戻ってこないというリスクは、なかなか回避できそうもないことが分かります。

そこで、もしもの場合を考えたリスクヘッジの方法は、手付金を少なくすることです。
ただ、この方法も100%リスクが無いかというと、無いわけではありません。

それは、売主から手付解除されるリスクです。
どうしても欲しい物件で、もしかしたら手付金が少ないために契約解除される可能性があれば、解除されにくい手付金にするという考え方もあります。

売主の宅建業者が倒産したら

いよいよ本題の“売主が倒産”した場合の手付金の行方について。

倒産といっても事業を継続することもあれば、破産手続きになることもあります。

どちらにしても、売主は資産を現金化して再建費用を捻出したい事情があります。
破産の場合も同じで、債権者にできるだけ多く配当する為にも、売買代金は受取りたいはずです。したがって不動産の引き渡しはされる可能性が高くなります。

ただ、引渡しまでの手続きや協議などは、監督委員や破産管財人となる弁護士と進めることになりますし、他にも債権者がいますので、時間がかかることは覚悟しなければなりません。

また、法的整理の過程で「契約解除」となる場合があるかも知れません。
その場合、手付金は“財団債権”となるので、他の一般債権者に優先して返還される可能性があります。
ただし、この場合も売主の資力によって返還される金額は変わってきますので、全額戻るかどうかは分かりません。

やはり手付金は限りなく少ない金額の方がよさそうです。

手付金の保全については次のページも参考になります。

手付金の意味と手付金保証制度と手付金保管制度の違い
中古住宅の購入は相手が不動産会社の場合もあれば、個人の方が売主になっている場合もあります。売買契約締結の時には“手付金”を支払いますが、契約締結から物件の引渡しを受けるまでには、ある程度の期間があるのが一般的です。 手付金は引渡し時に...

営業保証金や弁済業務保証金からの弁済

宅建業者は“営業保証金”を供託したり、所属する業界団体の保証協会の会員となって弁済業務保証金分担金を支払ったりして、万が一取引で損害を生じさせてしまった場合の弁済資金を準備しています。

手付金を支払った相手である宅建業者が倒産し、物件の引渡しが行われず手付金も戻ってこない時には、弁済制度によって手付金を取り戻すことが出来るのですが、弁済制度には限度額があります。

主たる事務所が1,000万円、従たる事務所が1ヵ所に対して500万円が限度です。
手付金返還の権利を持っている債権者が多数いた場合には、この限度額を超えてしまうこともあります。

弁済請求を行った時には既に限度額を超えてしまい、手付金が戻ってこないということもあり得ますので、やはり手付金は出来るだけ少なくするほうが賢明なようです。

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