2017年10月25日、福岡市の博多にオープンするホテルがあります。モンタン博多。
ファミリーやグループでの宿泊にも対応した都市型ホテルですが、ちょっと普通のホテルとは違うところがあります。なんとこのホテルはもともと賃貸マンションだったのです。賃貸マンションがホテルに・・・と聞くと“民泊”と思いますが、民泊とは違う本格的なホテルです。
賃貸マンションとホテルが共存するリノベーションホテル
94室ある賃貸マンションのうち、現在も賃貸中の46室を除く48室をリノベーションして、ホテルに用途変更。
加えて1階にはホテルフロントとコミュニティスペースをつくり、地域住民にも開放するといいます。
賃貸マンションのリノベーションとしてはあまり例のない事例ですが、今後、このようなケースが増えるかもしれません。そこで、建築基準法上の手続きなど参考になる情報をまとめてみます。
用途変更による建築確認申請
建築基準法では用途地域によって建築することができる建築物、建築してはいけない建築物を定めています。
賃貸マンションは共同住宅ですので、“工業専用地域”以外は建築することが可能です。対して、ホテルはけっこう規制があり、次のように建築してはいけない地域があります。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域(3,000㎡を超える場合)
- 工業地域
- 工業専用地域
用途地域による用途制限がありますので、ホテルを建築してはいけない地域に建つ共同住宅は、ホテルへの用途変更は出来ないわけです。
基準法第137条の18には「建築物の用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主事の確認等を要しない類似の用途」の規定があります。
類似の用途とは次の11のグループに区分した、同じグループの用途に変更する場合は“類似の用途”と認められるわけです。
- 劇場、映画館、演芸場
- 公会堂、集会場
- 診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
- ホテル、旅館
- 下宿、寄宿舎
- 博物館、美術館、図書館
- 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
- 百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
- キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
- 待合、料理店
- 映画スタジオ、テレビスタジオ
ホテルと旅館は同じグループですから、旅館を用途変更してホテルにするのは確認申請の必要はないわけです。
共同住宅は他に同じような用途が無いので、上のリストにはありませんが、共同住宅とホテルは別グループですから、用途変更には確認申請が必要になります。
法律による規制で注意するポイント
用途変更の場合に問題になる可能性があるのが、構造計算上の設計荷重です。
用途が変わると積載荷重が変わることがあり、積載荷重が増加する用途への変更はほとんど出来ないのが現実です。
ホテルの場合は『住宅の居室、住宅以外の建築物における寝室又は病室』に該当し、積載荷重は変わりませんので、後は耐震基準などの適合性がクリア出来れば用途変更はそれほど難しくはありません。
法令でもう一つのポイントが「消防法」ですが、防火対象物の区分ではホテルは「(5)イ」共同住宅は「(5)ロ」ですので、あまり違いは無いと思います。
まとめ
こうして見てみると、共同住宅をホテルに用途変更するのはそれほど難しくないという印象を持ちました。
以前、事務所を飲食店に用途変更する依頼を受けたことがありますが、構造検討の結果、断念したことがあります。
人口減少社会であり、空き家が増える日本です。
賃貸マンションをホテルに改造するリノベーションは、資産の有効活用になりそうな気がします。
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