戸建てより深刻なマンションの空家問題がやってくる

空家対策特別措置法が施行され、法律に基づいて強制的に解体撤去された戸建住宅もあり、将来大きな問題となる“空き家”に対する法的な整備ができましたが、空家問題は戸建住宅よりも分譲マンションの方がもっと深刻なことになると思われ、ここではマンションのそんな将来像を考えてみます。

空き家が生まれるメカニズム

“空き家”というと戸建て住宅を思い浮かべますが、まず、戸建住宅における空家発生の原因を考えてみます。

空き家には2種類あります。

  • 法律上の所有者がいる空き家
  • 法律上の所有者がいない空き家

所有者がいる場合は、居住する必要性が無い為空き家になっているわけですから、所有者の考え方によって、賃貸物件としての利用や、売却、あるいは解体するなど、なんらかの空き家対策が執られる可能性はあります。

問題となりやすいのが、法律上の所有者がいないケースです。
名義上の所有者が亡くなり、相続手続きされていないとか、法定相続人が相続放棄をしたなど、本来空き家の管理をするべき人がいない場合、空家対策特別措置法で指定する“特定空家”になる可能性が非常に高くなります。

所有者不明の空き家が原因でトラブルが起きた時の法律

上に書いたように所有者がはっきりしない空き家があり、近隣の生活環境に悪影響を及ぼすような場合、空き家は“特定空家”に指定され、解体しなければ非常に危険な場合、自治体によって強制的に解体撤去することが法律上可能になりました。

では、所有者が不明の住戸がマンション内にある場合のことを考えてみます。

空家対策特別措置法が定義する「空家等」もしくは「特定空家」は、建築物又はこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるものとされていますので、マンション内のすべての住戸が空室になっている状態は別として、一部に空室があったとしてもこの法律が適用されることはありません。つまりマンションに空き家があり、所有者が不明な場合に管理上の問題が生じたとしても、“区分所有法”の中で解決を図らなければならないわけです。

所有者が不明の住戸が存在するマンションの問題点

所有者が不明な住戸がマンションにある場合、どのような問題が生じるか考えてみます。

  1. 管理費・修繕積立金が未納になり、計画通りの修繕計画や管理業務が出来ない
  2. 老朽化し建て替えが必要になった場合、区分所有法にもとづく建替え決議が不可能になる
  3. 建替え決議が出来ても、組合員の絶対数が少なく資金不足の為、建て替えが出来ない

以上のようなことが考えられますが、1番目の「管理費・修繕積立金が未納」になる件は、各戸の負担額を増額して未納分を穴埋めすることで何とかなりますが、負担増に応じられるかどうかは別問題です。

2番目の不明所有者が20%を超える場合、“不在者財産管理人”の制度を用いて建替え決議を成立させる方法がありそうですが、所有者不明になっている事情にはいろんなものがあり、一戸ずつ解決していくまでには時間もかかるでしょうし、そもそも現在の区分所有法とマンション建替え円滑法では、多数の所有者が不明になっている状態を想定していないように思います。

3番目の資金不足についてはより深刻です。
所有者不明住戸と言っても、どこかに相続人がいることもあります。
探したあげくどうしても相続人が見つからないとか、相続人が全員相続放棄をするなどの場合、“不在者財産管理人”の制度を用いて、区分所有権の議決権を行使できる状態を作ることが出来れば、建替え決議が成立することもあります。

その場合でも、建替えに対する資金拠出が困難なケースが出てくると思われます。
建替えに係わる資金が確保できなければ、建替え計画そのものがとん挫することもあります。
「マンション建替組合法人」への融資制度なども検討課題として考えられますが、区分所有者のほとんどが居住している場合と比較すると、空室の多いマンションの場合は高いハードルを越えなければなりません。

戸建の場合は、危険な建物があり場合によっては強制的に解体撤去することによって、空家問題は解消できますが、マンションにおいては自治体が介入する余地はなく、区分所有者や、区分所有者の相続人が解決しなければならない問題としていつまでも残ります。

2036年頃には築50年超のマンションが172万戸に達すると言われています。
所有者不明の空き家が問題となるマンションが、あちこちに建っているという深刻な状態になる前に、マンションの空家問題に対処する法整備が必要だと思います。



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