売買契約後、引渡し前に売主が亡くなった場合、所有者が亡くなった不動産を売却する場合、どちらも相続登記が必要です。
売買がスムースに完了するように、媒介業者が知っておきたい相続登記に関する知識。
売買契約後に売主が亡くなった場合の引渡し
売買契約後に売主が亡くなることは、稀なケースですがあり得ることです。
売買は契約締結によって成立することを「民法555条」で定めています。
不動産売買の実務では、売買契約からある程度の期間(1ヶ月後とか)をおいて引渡しを行うことが一般的ですが、その間に契約の一方の当事者である売主が亡くなっても、売買は成立しており所有権は代金全額の授受によって移転することを約束していたので、相続人には代金を受領する権利と所有権を移転する義務があります。
不動産登記法には登記の連続性という原則があり、A→B、B→C、C→Dと、名義人の履歴がすべて連続するようにしなければなりません。
その為に売主から相続人へ、一旦所有権移転登記をする必要があるのです。
相続登記をしていない不動産の売買
登記をまだしていない相続した不動産を売却することになったとき、買主に所有権移転を行う前に相続登記が必要なことは、上に書いたとおりです。
相続登記は時間がかかる場合があり、早めに準備することが必要ですが、売買契約締結までに登記を完了していなければならないということはありません。登記前でも売買契約は締結できます。
相続人が一人の場合は相続人が特定できているので、相続人を売主として契約します。
複数の相続人がいる場合は相続人全員の共有として契約します。また、遺言書や遺産分割協議書の確認ができれば、相続人を特定して契約することもできます。
*この場合、戸籍謄本や改正原戸籍等によって、法定相続人を確認しておく必要があります。
相続登記前の売買契約の注意点
相続登記が完了していない場合や、遺産分割協議が終了していない場合に、遺産分割協議がまとまらないとか、所在不明な法定相続人がいるなどの不安な点がある場合は、媒介活動そのものを中断して、登記完了後に媒介を行う方が良い場合もあります。
法定相続人には遺留分を持っている相続人と持っていない相続人がいます。遺留分のある相続人が被相続人が亡くなる前に亡くなっていると、その子が“代襲相続人”となり遺留分を持つことになります。
遺言書によって遺産分割した場合や代襲相続人を除いて遺産分割協議を行うと、遺留分を持つ代襲相続人から“遺留分減殺請求”を受けることがありますが、遺留分請求権が不動産を譲受した買主にまで及ぶこともあるので注意が必要です。
参考 ⇒ 受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等
遺産分割協議書を早く作成するには
公正証書による遺言書による相続登記以外は時間がかかるものです。
ほとんどの場合は“遺産分割協議書”を相続人が集まって作成することになりますが、不動産の売却が決まっている場合は、出来るだけ早く手続きを済まさなければなりません。
遺産分割協議書作成は自分で作ることもできますが、登記手続きと一緒に司法書士に頼む方が早いと思いますが、必要な書類を事前に準備するようにしておきましょう。
- 亡くなった人の戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍・住民票除票または戸籍附票の除票
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑証明書・実印
- 不動産を相続する人の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書・登記事項証明書
- 相続する不動産の登記済権利書または登記識別情報
コメント