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リノベーションマンションはデメリットを考えて選ぶ

2018年の統計では、首都圏での新築マンション成約戸数は約2万3千戸、対して中古マンションは約3万7千戸の成約があり、中古マンション需要の高さが覗えます。(出典:全国宅地建物取引業協会連合会「不動産市場動向データ集年次レポート2018年」
2000年以来、日本では住宅性能表示制度の開始により、質の高いマンション供給おこなわれており、中古マンション市場には優良物件が多く販売されていることが背景にあると考えられるのです。

なかでも「リノベーションマンション」と呼称される、大規模なリフォームをおこなった物件の増加は、新築マンションとの価格差からも注目されており、マンション全体の選択肢を広げる効果をみせています。

ここではリノベーションマンションの増加により、中古マンションの選択方法に現れた変化に注目し、改めて中古マンションの選び方を考えていきます。

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中古マンション選択の基本

中古マンションを選ぶさいに考慮すべき指針は、市場の変化にかかわらず重要なポイントです。どのような物件であれ必ず押さえたいマンション選択の検討項目は次の3つです。

  1. 立地条件の考え方
  2. 耐用年数を考慮する
  3. 将来設計を考える

立地条件の考え方

新しい住まいを求めるときの最大ポイントは「立地」です。購入するとしばらくの期間は生活の拠点となるわけで、数年ごとに住替えることはあまりありません。終の棲家という言葉もあるとおり、一生暮らしつづけることを選択することもあるのです。

最近はテレワークの浸透により、以前ほど「通勤」を重要としない方も増えているとはいえ、やはり交通便は大事な要素です。交通便だけでなく、一般的にいわれる教育・医療といった社会環境や、商業・娯楽施設などの生活環境そして、自然環境を重視するケースもあります。

将来の売却を見通し、資産価値を重視するうえでも立地は外せない条件といえるでしょう。

立地条件を整理するうえで首都圏と地方都市とでは、考え方を変える必要がでてきます。キーワードは「コンパクトシティ化」です。

人口減社会となりこれまで拡大されてきた都市の区域を、縮小する政策がすでにおこなわれています。たとえば「都市再生特別措置法」にもとづく立地適正化計画にて、都市機能誘導区域外・居住誘導区域外となっている地域では、一定規模の新規計画は届出が必要になり、都市化を制限するようになりました。

そのような地域では将来的な人口減の影響により、利便施設の減少や交通ネットワークの縮小なども考えられます。現在はまだまだ利便性が高いと思われる地域であっても、地域によっては大きく変化する可能性があるのです。

この大きな環境変化は首都圏といえども例外ではなく、八王子市においても「持続可能なまちづくりを目指す八王子市都市づくりビジョンの策定」にて、コンパクトシティを見据えた将来ビジョンを公表しています。

中古マンションのなかには、コンパクトシティ化政策による影響を受ける物件もあり、将来のライフスタイルを予想したうえで希望する立地条件を整理する必要があるのです。

耐用年数を考慮する

核家族化が定着した日本では、単身世帯の増加などにより、住宅をはじめとした不動産資産の継承がむずかしくなっています。さらにマンションの耐用年数を考えたとき、「何歳のときに築何年のマンションを購入するのがベストか? 」というテーマも見えてきます。

マンションの耐用年数には4つの側面があります。

  1. 経済的耐用年数
  2. 社会的耐用年数
  3. 物理的耐用年数
  4. 法定耐用年数

法定耐用年数はRC造で47年ですが減価償却費を求める税制上の年数であり、マンションを所有する面で重要なのは「経済的耐用年数」と「社会的耐用年数」です。また物理的耐用年数は諸説ありますが、これもあまり影響のある要素ではありません。

もうひとつ耐用年数を考えるうえで重要なのが「耐震基準」と「構造計算基準」です。

耐震基準は1981年に新耐震基準として改正され、すでに築40年近いマンションでも「新耐震基準」により設計されています。しかし1999年には、ほとんどのマンションが該当する鉄筋コンクリート造の、構造計算基準が改定されています。

さらに2010年にも改訂がおこなわれており、1981年の新耐震基準以降の建物であっても、年代によって構造性能の違いがあることを知っておく必要があります。

経済的耐用年数と社会的耐用年数

マンションはいつかは建替えされるか、解体し更地にして売却されるかのどちらかです。その時期は経済的耐用年数もしくは社会的耐用年数が近づく前が望ましいといえます。マンションを所有している以上その時期はいつか迎えることになるのです。

購入にさいしては「あと何年後にその時期がくるか? 」について当然考慮すべきことで、所有期間中に建替えまたは解体が予想される物件は、条件整備が可能なのかどうかを判断する必要がでてきます。

  • 管理組合が健全に運営され管理も適正におこなわれている
  • 修繕積立金の残高は充分であり管理費の納付状況も問題ない
  • 管理会社は実績があり円滑な維持管理をおこなっている

などについては「管理に係る重要事項調査報告書」をチェックすると把握できます。

チェックの結果、将来的に修繕積立金の不足が予想される場合、経済的耐用年数が短くなる可能性があります。つまり耐久性を高め寿命を延ばそうとしても、資金的な裏付けがなく老朽化が進んでしまうことが考えられます。

所有者が高齢化し空き家が増えるなど、管理組合の運営に支障がでてくることも大きな問題です。役員会を組織できないような場合には、マンション管理会社が管理業務から手を引くなどの事象もおきています。このような状態になると社会的耐用年数の限界を想起させます。

物理的には65年ともいわれる鉄筋コンクリート造ですが、30年、40年でスラム化してしまうマンションがあり得ることを考えておかなければなりません。

将来設計を考える

「立地」と「耐用年数」は外的要素といえるものですが、将来を考えることは自分自身のことであり内的要素といえるものです。自身や家族の将来を考えるあたって、必要なことは「ライフサイクル」の視点です。

自宅を取得→家族の成長→家族の独立→自宅の承継

ライフサイクルにマンションの取得時期をあてはめてみると、将来の変化がみえてきます。さらに耐用年数とライフサイクルを考慮すると、いつまで住むか(所有するか)? という問いの答えもみつかることもあるでしょう。さらに、承継ではなく利活用の方法を検討することも予想されます。

  1. 売却による住み替え
  2. 将来は賃貸利用

また、ファミリー世帯ではいずれお子さんが独立し、不要となった個室を取り払いリフォーム・リノベーションする計画もでてくるでしょう。マンションにはリフォーム・リノベーションのしやすい構造、しにくい構造があります。

将来設計を考えると、自ずと選ぶべきマンションの構造方式があることに気づくのです。

将来という面では所有期間中に建替えの必要がある物件もあるでしょう。建替えには管理組合の決議によるほか、建替えプロジェクトを主導するデベロッパーの存在や、建替え事業資金の調達などむずかしい問題に直面します。

建替え時期の年齢によっては心身の負担が大きくなることもあり、先々を見通した物件選択が求められるのです。将来を考慮するにあたって、すでに述べたマンションの寿命も、大切な要素であることが理解いただけるのではないでしょうか。

リノベーション済マンションを選ぶには

中古マンション選択のさいに検討したい、基本的なことがらについて説明しました。
ここからはリノベーションマンションについての考え方をご紹介します。

中古マンションにはリノベーション済の物件も多くなっています。マンションリノベーションは室内の造作を解体し、スケルトン(構造躯体)の状態にしてから、間仕切り・内装・設備などの工事をおこない、新築時と同様の室内に変える方法です。

部分的なリフォーム工事と区別するため、「リノベーション」の用語が使われるようになりました。
住宅設備は最新の仕様になっていたり、新築年代によっては室内の内装グレードなども高いものになっています。

マンションの工事は管理組合への届出やスケジュールの調整など面倒なことも多く、リノベーション済の物件は購入後に入居がすぐできるメリットが大きいといえるでしょう。

マンションを選ぶポイントについてはすでに述べましたが、リノベーションマンション特有の注意点もあります。繰り返しになる部分があるかもしれませんが、「リノベマンションだからこそより重要! 」という面もありますので、おさらいの意味で読みつづけてください。

新築年代を確認する

新耐震基準についてすでに解説しましたが、1981年を境に地震に耐える強度の基準が異なっています。

物件選択では1981年以前の物件は基本的にスルーしましょう。正確にいうと1981年5月31日までの建築確認済物件で、旧耐震基準で建てられたマンションです。
戸建住宅は「耐震改修」といった方法があり、現行の耐震基準に適合させることができますが、マンションはほとんど不可能になっています。

旧耐震基準のマンションが必ずしも危険とは言い切れないのですが、費用をかけたリノベーションマンションが大きな地震で損傷を受けるのは避けたいものです。地震の多い日本では耐震性能の高い物件を求めるのは自然なことといえるでしょう。

新耐震か旧耐震かの判断は「確認済年月日」でおこないます

ポータルサイトや不動産会社の物件情報に、確認済年月日が記載されるケースは非常に少なく、一般の消費者が確認済年月日を簡単に調べることはできません。調べるには、確認を下した特定行政庁(都道府県や特定の市・区)に赴き、「建築計画概要書」の閲覧申請をすることにより初めてわかります。

1982年以降に表示登記された物件は、新耐震基準の可能性がありますが確実ではありません。何故なら確認から着工や竣工までの期間に制限はないからです。旧耐震基準により設計した建物が1981年5月31日以降に着工しているケースはざらにあるのです
表示登記の日付から確認年月日を推測することは不可能であり不正確なものになってしまいます。

耐震基準の新・旧を正確に知るためには、販売する不動産会社または仲介する会社に確認することが確実。不動産会社は、事前に建築確認済年月日を調査するのが通常です。

リノベーションの範囲を確認

ポータルサイトで物件検索するとき、オプション条件で「リノベーション」をチェックすると、リノベーション済物件が表示され選びやすくなっています。

写真も多く掲載されて新築同様な状態を確認できるのですが、本来の意味のリノベーションではなく、内装だけの工事であったり、一部の住宅設備の交換に終わっているケースもあります。

ポータルサイトでは、物件を取扱う不動産会社が物件情報を登録します。登録のさいに「リノベーション」という検索アイテム登録ができるようになっているサイトが多いのです。

リノベーションを登録するさいに取扱い不動産会社の判断でおこなうので、厳密な意味でのリノベーションではなく、単なるリフォームの場合もあります
そのような理由からリフォーム相当であってもリノベーションとされている場合があるので、取扱仲介会社に確認するのが大切です。

特に水廻りは設備機器が新しくなっていても、配管類の交換までおこなっているか確認したいところです。築年数の古い物件では配管類の材質によって、経年劣化が進んでいる可能性はあります。

リノベーションマンションは相場がわからない

中古マンションの相場価格は地域や築年数などにより、ある程度わかるものです。また販売中の中古マンションデータベースにもとづき、地域ごとの坪単価を調べることも可能になっています。

価格の比較検討は物件選択で重要なプロセスであることはいうまでもありません。

しかしリノベーションマンションは、工事費のプラス分があるので客観的な相場価格はあてにできません。またリノベーション物件は不動産会社が買取りして工事をおこなっているケースが多く、個人が仲介で売り出している物件と比較すると高めになる傾向があります。

買取り再販物件は譲渡所得税率も高く、不動産取得税や登記費用などの付加もあり、販売価格は単なる仲介物件よりも高くなるのです。

相場価格では判断できないとなると、同程度の物件との比較検討にならざるを得ません。充分な時間をかけた内覧により、内装グレードや住宅設備仕様を把握しましょう。

最近はホームインスペクション(既存住宅診断)をおこなう建築士事務所が、内覧同行によりアドバイスをおこなうサービスもあり、活用してみるのも方法です。客観的な立場から建築専門家の意見を聞いて判断する方法は、米国では普通におこなわれています。

不動産会社の営業スタッフとのやり取りだけで商談が進む不動産市場ですが、グレードの高くなったリノベーションマンションこそ、採り入れたい方法といえるでしょう。

また不動産会社が売主となることが多いリノベーションマンションには、不動産会社による2年間の契約不適合責任がつきます。価格が高くなりがちですが、なにか不具合があった場合の安心料が付加されていると考えることもできるでしょう。

契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、2020年民法改正により瑕疵担保責任から変更になった概念です。
これまで売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合は、2年間の瑕疵担保責任が義務づけされていました。名称と概念の変更により、売主の義務および買主の権利について内容が変わっています。

  1. 追完請求権が認められた
    これまで不具合などの “瑕疵” がみつかった場合、買主は売主に対し損害賠償を求めるか、契約の解除ができました。さらに改正により、不具合な部分の修補を請求することが可能になりました。
  2. 代金の減額請求が認められた
    これまでの瑕疵担保責任では代金の減額請求はできなかったのですが、改正により可能になりました。

ほかにも損害賠償できる対象範囲や権利行使の期間などに変更がありますが、これまでの「瑕疵担保責任」よりわかりやすい法制に変わっています。

マンションは実際に生活をはじめてからでなければ、不具合などに気づくことはありません。また中古物件は「経年劣化」のあることが前提で取引されます。しかしリノベーションマンションはほとんどが新しいものであり、品質や性能面で “新築同様” と考えられ、売主責任を明確にできることが安心材料になるのです。

リノベーション済物件は、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)であることを確認することが大切です。

リノベーション済マンションをすすめないケース

増加するリノベーションマンションですが、すすめないケースも実はあるのです。前述の『将来設計を考える』に関連するのですが、家族構成の変化などが明らかに予想される場合には、リノベーション済を購入するのはもったいない! といえるのです。

数年後には家族構成の変化により、思い切ったリフォームをする可能性があります。あるいは住み替えすることになり、賃貸物件として活用するプランがでてくるかもしれません。

自宅は生活の拠点ですが、活用すべき資産でもあるのです。賃貸物件として活用するには、所在地域で需要の高い間取りや設備である必要があります。

  1. 3LDKのマンションをテレワーク用のオフィススペースがあるタイプにリフォーム
  2. シェアハウス需要の高い地域では共用スペースを充実させた間取りに変更
  3. 賃借人にDIYを許可し自由なリノベーションを可能にする

たとえば上記のような賃貸活用方法がありますが、賃貸活用以外にも、退職後の独立起業に対応したオフィス活用なども考えられます。将来におけるリノベーションプランが生まれる可能性がある場合は、価格が高くなるリノベーションは避けたほうがよいといえるでしょう。

購入後のリノベーションに適した物件

リノベーションマンション選択時のポイントについて解説しましたが、購入後にリノベーションをおこなうという選択肢もあります。

満足のいくリノベーション物件がみつからない場合、中古マンションを購入後にリノベーションする方法について考えていきましょう。あるいは先に述べたような数年後にリノベーションをおこなうケースもあるかもしれません。

中古マンションを選ぶさいには、リノベーションに適した物件かどうかの視点があります。どのような点に注意すべきか、具体的なポイントを取り上げ解説します。

構造の確認は必須

ほとんどのマンションは1戸単位が構造区画になっていますが、5階建てまでのマンションでは壁式鉄筋コンクリート造で建てた物件が多くなっています。
壁式構造は室内にも構造上主要な耐力壁が配置されているため、間取りの変更ができずリノベーションの障害になることがあります。

対して6階建て以上になるとラーメン構造になるので、1戸単位がひとつの構造区画になり間仕切りの変更は自由にできます。構造方式によりリノベーションのし易さは変わるので、必ず確認が必要です。

ラーメン構造の場合は四隅に柱の出っ張りがあるので簡単に見分けられます。

構造方式に加え新築された年代も大切です。
すでに述べたように少なくても1982年以降が望ましいのですが、できれば2000年以降がもっとよいといえます

残存耐用年数も重要なポイントです。多額の費用をかけてリノベーションをおこなっても、短い期間で耐用年数が限界になってしまっては無駄な費用になってしまうといえるでしょう。

開口部の劣化具合を確認

リノベーションのできる範囲は管理規約で決まっています。基本的には専有部分に限定されており、床・壁・天井の躯体表面から室内側になります。

たとえば壁に張られた石こうボードなどは専有部分に属しますが、鉄筋コンクリートの壁そのものは共用部分になります。コンクリート壁に穴をあける・溝をつける・削るなどの行為は、禁止されており強度低下の原因にもなってしまうのです。

共用部分には玄関ドアや窓サッシも含まれるので、劣化している状態であっても簡単に交換することはできません。

開口部品は断熱性能や機密性能にも影響があり、せっかくリノベーションしても、開口部の劣化が原因の性能低下がおこる可能性もあります

共用部分の変更は管理組合の規定によるので確認が必要です。

リノベ費用は住宅ローンと補助金活用

リノベーションは多額の費用がかかります。マンションを購入しさらにリノベーション費用もなると、自己資金でまかなえる人は少ないと思います。

一般的にリフォーム工事にはリフォームローンを利用することが多いですが、マンション購入に合わせたリフォームには「リフォーム一体型の住宅ローン」がお勧めです。

一般のリフォームローンは無担保の貸付が多いのですが、住宅ローン一体型は抵当権設定が前提です。その分、適用金利は住宅ローン並みになるので、リフォームローンよりも返済期間も長くなり、月返済額を低く抑えられるメリットがあるのです。

「リフォーム一体型の住宅ローン」は、リノベーション済物件を購入する場合と比べ、次のような違いがあるので注意してください。

  1. 購入後にリノベーションするケースでは金融機関によって、購入ローンとリフォームローンの別建てになったり、一体型になったとしても購入分を分割融資する時点から返済がスタートする場合があります。そのため工事が完成し入居するまでの期間、住宅ローンと賃貸家賃の二重払いとなってしまうのです。
  2. あるいはつなぎ融資を利用して購入費用を一時的に借入する方法もありますが、つなぎ金利は本融資の金利より高くなるのが難点です。

最後に、リノベーションの費用負担を少なくできる、次のような補助金制度もあるので付け加えておきます。

補助金名称 対象工事 補助金額
断熱リノベ 内窓設置 補助対象経費の1/3以内 1住戸15万円まで
次世代建材 断熱パネル 補助対象経費の1/2以内 1住戸125万円まで 下限あり(20万円以上)

(令和2年5月現在)

内窓を設置したり断熱パネルを張りつけて断熱性能を高める工事に対し、補助金が活用できます。
令和2年度の申請スケジュールは、環境共創イニシアチブのパンフレットで確認できます。

補助金
引用:一般社団法人 環境共創イニシアチブ

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