不動産の売買契約が無効になる理由には、さまざまな法的根拠があります。宅建試験でもよく出題されるテーマであり、十分な理解が必要とされています。
宅建試験に出た売買契約の無効事例
宅建試験の令和6年では[問1]が契約無効に関するテーマとなっていました。
問題の構成は
- 未成年者の意思能力の有無による有効性
- 公序良俗に反する法律行為の有効性
- 詐欺による意思表示と強迫による意思表示の有効性
- 他人物売買に関する売買契約の有効性
以上について設問に対する正誤を判断する内容です。
各設問について法的な解釈について解説します。
未成年者の意思能力と法的な有効性
未成年者の意思能力および法律行為の有効性は、民法第3条の2において
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
引用:民法第3条2
とされています。
さらに、未成年者の法律上の行為については[民法第6条]に規定があります。
未成年者は法律行為を行うことはできませんが、親などの法定代理人が許可した営業はできるとされています。しかし、親が認めた営業行為を未成年者が行った場合、意思能力がなかった状態での法律行為は[民法第3条の2]の規定により無効になります。
ただし無効を主張できるのは、当該の未成年者または法定代理人であり相手側ではないところがポイントです。民法第6条2項には「法定代理人は、未成年者に与えた許可を取り消しまたは制限できる」とあり、意思能力のない未成年者を保護する趣旨となっているのです。
参照:民法第6条
公序良俗に反する法律行為の有効性
契約は原則的に自由であると[民法第521条]に定められています。
ただし、法令にて特別の定めがある場合は制限を受けます。
参照:民法第521条
公序良俗に反する法律行為については、民法第90条に
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
引用:民法第90条
と定めており、当事者が納得し合意したと言えども法律上は無効とされます。
なお、公序良俗に反する法律行為の具体的な規定はありません。一般的には次のような行為が該当します。
- 不正行為
- 非倫理的行為
- 人権侵害
詐欺による意思表示と強迫による意思表示の有効性
意思表示が詐欺によってなされた場合、法的な有効性は「取り消し」により無効となります。ただし詐欺と強迫とでは取り消しの有効性に違いがあります。
民法第96条では、詐欺または強迫により行った意思表示は取消しができます。
参照:民法第96条
強迫による意思表示は取り消すことができますが、詐欺の場合は簡単に取り消すことはできません。
相手方が第三者の詐欺により行った意思表示であり、相手方が詐欺であると知っていたか、知ることができた場合にのみ取り消すことができます。
また詐欺による意思表示を取り消す場合、第三者に影響が及ぶこともあります。
第三者が善意でかつ無過失であった場合には、第三者に対して取り消しの効果は及ばなくなります。
他人物売買に関する売買契約の有効性
宅建業法では宅建業者が行う他人物売買は禁止しています。ただし宅建業法第33条の2に定めるように例外が認められています。
逆に言うと宅建業者以外は他人物売買が可能であり、他人所有の不動産を売買する契約は有効となります。
ただし、売主は当該不動産を所有者である他人から購入した上で買主に引渡す義務があり、万が一購入ができないときには契約不履行や損害賠償のリスクを負うことになります。
なお、宅建業法第33条の2では、例外について次のように定めています。
- 宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているとき、その他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令・内閣府令で定めるとき。
- 当該宅地又は建物の売買が第41条第1項に規定する売買に該当する場合で、当該売買に関して同項第1号又は第2号(手付金の保証等)に掲げる措置が講じられているとき。
引用:宅建業法第33条の2
また宅建業界では、民法537条、538条が定める「第三者のためにする契約」により、他人物の売買を行うケースもあります。
売買契約が無効になる事例-まとめ
宅建試験の令和6年では[問1]では、4つの選択肢から正しい答えを選ぶものですが、回答-1が「意思能力のない未成年が行った法律行為は無効」となっており正解になります。
回答-2は、公序良俗に反する行為は「合意」があれば有効となっており、間違いです。
回答-3は、詐欺や強迫による意思表示は「取り消し」により無効となるので、取り消ししなければ無効とならず間違いの回答です。
回答-4は、他人物売買を無効にしているので、誤った表現となります。
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