
宅建業者が行う不動産の販売や賃借では、さまざまな広告媒体を利用しますが、広告の方法には規制が設けられています。宅建業者は自ら売主や貸主になる場合、あるいは当事者の代理人になる場合、そして当事者からの依頼を受けて媒介する場合と、取引きにおける立場の違いにより受ける広告規制に違いがあります。
ここでは、令和6年の宅建試験に出題された事例に基づき、不動産広告の規制について解説します。
宅建業者が規制を受ける不動産の広告
不動産の売却や賃貸業においては購入や賃借する顧客を発見するため、各種の広告宣伝を行います。不動産広告には法律上の規制があり、宅建業法と不動産の表示に関する公正競争規約にしたがう必要があります。
具体的に列記すると広告に関する法律等は以下のとおりです。
誇大広告等の禁止
宅建業法第32条では、宅地または建物の広告をする時に著しく事実と相違する表示や、実際のものよりも著しく優良や有利であると誤認するような表示は禁止されています。その場合の広告規制の対象となるのは、次のようなことがらになります。
- 所在
- 規模
- 形質や利用制限(現在もしくは将来の)
- 環境もしくは交通その他の利便性
- 代金、借賃などの対価の額
- 代金、借賃などの支払方法
- 代金、交換差金に関する金銭貸借のあっせん
広告の開始時期の制限
不動産に関する広告をするには、取引きの対象となる宅地や建物が完成していることが原則です。ただし、開発行為の許可や建築確認の審査が済んだ工事に関しては、完成前であっても広告が可能になっています。
一般には「青田売り」という表現を使いますが、青田売りには広告の開始時期の制限に加えて、手付金等の保全を行わなければなりません。
*青田売りの手付金等の保全は、売買価額の5%を超えるか1,000万円を超える場合に必要です。
取引態様の明示
不動産の広告には「取引態様」を明示しなければなりません。
その場合、宅建業者の立場により取引態様が必要な取引きは次のとおりです。
| 売買・交換 | 賃借 | |
| 当事者 | 明示が必要 | |
| 代理人 | 明示が必要 | 明示が必要 |
| 媒介 | 明示が必要 | 明示が必要 |
つまり、宅建業者が賃借の当事者になる場合のみ、広告には取引態様の明示は不要になっています。
不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則
不動産の表示に関する公正競争規約は2022年に改正されており、以前の内容から大きく改正されたポイントがあります。
- 分譲物件では、交通や各種施設への距離・所要時間は、最も遠い住戸からも表示する
- 通勤時の所要時間が平常時よりも著しく要する時は、通勤ラッシュ時の所要時間も表示する
- 通勤に乗り換えが必要な場合は、乗り換え時間も含める
- 距離・所要時間を表示する起点は物件の出入口とする
- 交通利便性に関する所要時間は「物件から最寄り駅等まで」とする
- 特定事項の明示義務において、土地が擁壁に覆われていない場合の建築制限についてその内容も明示する
出典:不動産公正取引協議会連合会「表示規約同施行規則主な改正点」
取引態様の明示に関する令和6年の宅建試験問題
宅建試験の令和6年では[問33]が宅建業者への広告規制に関することがテーマとなっていました。
設問は、広告に関する宅建業法の規定で誤っているものを答えるものでしたが、以下の4つの回答が設定されていました。
- 宅地の売買契約が成立した後も、インターネット広告を継続していた場合は法第32条に違反するため[正解]
- 宅建業者が賃貸借契約を締結した建物を、自ら貸主として転貸する場合は、取引態様の明示は不要なので[正解]
- 青田売りを行う宅地の販売広告で、開発許可の明示に加えて取引態様の明示も必要であり[誤り]
- 複数の区画がある分譲宅地のシリーズ広告では、毎回、取引態様の明示が必要なため[正解]
以上のように、回答「3」がこの問題の答えとなります。


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