不動産売買契約はクーリング・オフが可能です。クーリング・オフとは特定商取引に関する法律第9条に定める「訪問販売における契約の申込みの撤回等」を言いますが、不動産売買においても売主が宅建業者である場合、売主の事務所以外の場所で行った不動産買受の申込みや契約締結は、要件を満たしていれば撤回や契約解除ができます。
宅建業法第37条の2には「事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等」の規定が、クーリング・オフに関するものになっています。
では、不動産売買契約においてクーリング・オフができる要件とは、どのようなものでしょう? 不動産のクーリング・オフについては宅建試験にも出題されるケースがあり、最近では令和6年の[問30]に出されています。
不動産売買契約をクーリング・オフできる要件
クーリング・オフできる条件として、まず前提となるのは
さらに
クーリング・オフが適用されるのは売主が宅建業者であること、これについては宅建業法第37条の2に規定があります。また、買主が宅建業者の場合は適用されないことについては、宅建業法第78条に除外規定があります。
買主が宅建業者でなければ適用できるので、一般個人が買主の場合だけに留まらず、宅建免許の無い法人も適用になるところが重要ポイントです。
不動産売買のクーリング・オフは、申込みや契約締結の場所により適用される場合とされない場合があります。売主の事務所で行った申し込みや契約締結は適用除外ですが、事務所等以外とは具体的にどのような場所になるのでしょう。
クーリング・オフ適用除外の場所
クーリング・オフが適用されない場所の原則は
つまり、専任の宅建士がいなければならない、と定められている場所(事務所)での申込みや契約締結はクーリング・オフが適用されません。この原則に基づくと、喫茶店やレストランなどでの申込みなどはクーリング・オフの適用できる場所となります。
さらに事務所以外に、国土交通省令・内閣府令である宅地建物取引業法施行規則第16条の5では、クーリング・オフができない場所として以下のような場所を定めています。
- 継続的に業務を行うことができる施設がある場所
- 一団の宅地建物の分譲を行う案内所で土地に定着したもの
- 上記の場所が、売主から代理または媒介を受けた宅建業者の場合も含む
- 買主の希望で買主の自宅または勤務先を指定した場合
- 多数の顧客を対象とした申込み受付けを予定していた特定の場所
参照:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(令和7年4月1日施行版)(p.41)
クーリング・オフ適用除外その他の要件
クーリング・オフが適用される場所で行った申込みまたは売買契約であっても、クーリング・オフをしようとしてもできない場合(適用除外の条件)があります。
- 売主または代理・媒介業者がクーリング・オフについての告知を行ってから8日が経過した
- 引渡しを受け代金の全部を払った場合
- クーリング・オフを書面で行わなかった場合
これらに該当する場合はクーリング・オフができません。
また、クーリング・オフについての告知は、売主または代理・媒介業者が書面で行いますが、書面には「申込者または買主の氏名および住所」と「売主の名称および住所さらに宅建免許番号」は必要ですが、宅建士の氏名は必要ありません。
令和6年宅建試験[問30]の解説
ここまでの解説に基づき、令和6年宅建試験[問30]の正解を導き出します。
[問30]は4つの記述のうち誤っているものを選択する問題です。
記述-1は、売主である宅建業者が買主あるいは申込者に対し交付する、クーリング・オフの告知についての書面において、宅建業者の商号、住所、免許番号を記載しますが宅建士の記名は必要ないとなっています。これは正しい記述です。
記述-2は、買主または申込者が自身の希望により、勤務する会社の事務所で契約や申込みをした場合、勤務する会社の事務所または自宅はクーリング・オフの適用外となるため、これも正しい記述です。
記述-3は、上記と同様に自身の希望により喫茶店で契約または申込みを行った場合ですが、喫茶店は適用除外の場所には該当しないのでクーリング・オフが適用できます。ゆえにこの記述も正しい記述です。
記述-4は、買主または申込者が、融資を受ける銀行で契約または申込みを行った場合です。銀行も適用除外に該当する場所ではないため、この記述は間違いであり正解は[4]となります。
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