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不動産売買契約書を作成する時の手付解除期限の考え方

売買契約時に支払う「手付金」の目的は、解約手付として授受されるのがほとんどです。契約解除の権利は売主買主双方にありますが、解除期限を設けないのはトラブルの基になります。一般的な設定方法を含めて手付解除期限の考え方を解説します。

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手付解除期限をどのように決めるか

手付解除期限についてまず覚えておきたいことは、売主が宅建業者の場合は期限を具体的に設定することはできません。

売主が宅建業者の場合は契約約款に記載されている

相手方がこの契約の履行に着手したとき

を適用します。

これは、建売住宅やリノベーションされた中古住宅などを業者から購入する、一般個人の解除権を保護する目的があります。

業者が売主の場合、業者側から契約解除することは考えられず、ほとんどの場合買主=一般消費者です。一般消費者に対し契約解除期限を定めるのは契約解除権の制限になるわけです。

契約解除に至る理由はいろいろなものが考えらます。

  • 住宅を購入しようとしたら親に反対された
  • 勤務先の経営状態がよくなく収入減やリストラがあるかもしれない
  • 大きな事故や病気を患い、当分の間、仕事ができない
  • 収入合算する予定だった奥さんと離婚することになった

事例を挙げればもっとあると思います。このような事情で契約を解除したいと思っても、解除期限が短い場合は大きな負担になってしまいます。

一方、業者側が手付解除の申入れがあった場合に、履行に着手していることを理由に手付解除を阻むには、履行着手の証明をしなければなりません。業者側としては、住宅ローンの審査が通り承認されるまで、はっきり言って何も準備をすることは無く、履行着手の証明はかなり難しいものです。

*買主の希望によってリフォーム工事に着手している場合は、履行に着手していると言えるでしょう。

売主が一般個人や法人の場合の手付解除期限

手付解除期限を過ぎてから契約解除をする場合には、「違約金」の支払いによって契約を解除することになります。また、損害賠償請求を受ける場合もあるので、手付解除期限を安易に決めることは避けた方がいいでしょう。

中古住宅・マンションなど契約から1ヶ月後に引渡しになる物件
買主が住宅ローンを利用して購入する場合もあり、その手続きのスケジュールを考慮して1週間程度とするのが多いと思います。
1棟売りのアパートや賃貸マンションや他の事業用物件
売買契約を締結してから本格的な事業計画に着手したりして、引渡しまでに3ヶ月以上の期間がある場合などは、1ヶ月程度の解除期限があってよいと思います。
引渡しまでに3ヶ月以上の期間がある物件
期日を決めずに「相手方がこの契約の履行に着手したとき」を期限とする考え方もありますが、トラブルになる可能性もあり、2ヶ月後などを目途に双方で話し合って決める方がよいと思います。

手付解除期限を考えるポイント

手付解除期限を考えるタイミングはいつかというと、契約書の案を作成している時です。売買契約書の作成はほとんどの場合、売主または売主側の媒介業者です。重要事項説明書を作成すると同時に契約書案をまとめるのが普通です。

その為、まず売主にとっていつがよいかを考えますが、売主側が手付解除する可能性は非常に少なく、ほとんどは買主からの解除です。

短くすればするほど “解除されにくい” のですが、契約した翌日ではあまりにも非常識です。買主側の事情を考えながら、買主が同意してくれそうなギリギリの線で決めるのが実務上よくやっていることです。

不動産売買契約における手付の位置づけ

「手付」には3種類あります。

  • 証約手付-契約が成立したことを証明する目的で授受される
  • 違約手付-買主が債務不履行した場合に違約金や損害賠償金として没収される
  • 解約手付-不動産売買契約で一般的に授受される手付、買主は支払った手付金を放棄することによって契約を解除でき、売主は手付金の倍額を買主に支払うことによって契約を解除できる

手付の種類を特別指定しない場合には「解約手付」となります。手付金は引渡し時に代金に充当するので、売買代金の一部を前払いすると捉えてもいいと思います。

売買契約に手付は必ず必要なものか?

こんな疑問があるかもしれません。

手付は必ず必要なものではありません。売主・買主双方が「手付はなし」で合意すると、手付金の支払いが無くても契約は成立します。しかし、手付なし契約は手付解除ができないのでトラブルの原因になりかねません。

手付金額に制限はあるか

手付金額に制限はありません。
いくらでもいいのですが、一般的には2%~10%の範囲になっていることが多いと思います。

ただし売主が宅建業者の場合には制限があります。

  • 1,000万円以下でありさらに
  • 完成物件の場合は10%以下
  • 未完成物件の場合は5%以下

以上の制限を超える場合は保全措置をしなければなりません。

宅建業者にとって保全措置は手間と費用がかかる為、制限の範囲内で手付金を設定することが多いようです。

中間金の役割

売買契約書の標準様式に「中間金」の項目がありますが、どのような目的で支払うお金でしょう。

中間金は売買代金の一部になりますが手付と同様「保全措置」の対象なので、売主が宅建業者の場合は手付金と中間金の合計金額が規定以上だと保全措置を講じる義務が生じます。

売主に手付金等の保全措置が義務づけされる場合
手付金+中間金の合計金額が

  • 1,000万円を超える
  • 未完成物件の場合は物件価格の5%を超える
  • 完成物件の場合は物件価格の10%を超える

中間金の支払いを取決めするケースとしてあるのは、中古戸建や中古マンションの売買で売主が個人の場合です。

売主が居住中の場合、引渡しまでに転居しなければなりません。新居のための資金や引っ越し代に売買代金を充当したいと考える売主の事情に合わせて、売買代金の一部を引渡し前に買主が支払うケースがこのパターンです。

中間金の支払いをすると契約の履行に着手したとみなされ、売主は手付解除はできなくなります。

手付解除の方法

では契約解除を具体的にどのようにするのでしょうか。

買主が解除する場合は手付金の放棄により解除できるので、売主に対し「契約解除」する旨の意思表示をおこないます。媒介業者がいる場合もありますので、媒介業者には電話などで伝えるますが、売主に対しては「解除日」を確定する必要もありますので、内容証明郵便が望ましいです。

売主が解除する場合は、実際に手付金の2倍の金額を買主に支払ったうえで、契約解除の意思表示をします。この場合も媒介業者がいる場合には、業者の立会いを求めて解除することになります。

手付解除の場合に気になるのが「仲介手数料」です。

手付解除の場合は「契約が無効」になるものではありません。仲介手数料の請求権は媒介業者にありますので、金額をどのようにするか売主・買主を含めて話し合いにより決まります。

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