
宅建業の免許には専任の宅建士が必要であり、宅建士には「宅建士証」の有効期限に基づき「更新」をしなければならない義務があります。
宅建士証の有効期限が切れた宅建士は、宅建士としての業務ができないのは当然ですが、専任の宅建士の宅建士証が無効になっていると宅建業者としての業務ができなくなります。
この記事では、令和6年宅建試験の問29で出題された内容に基づき、宅建士の有効性や宅建免許の有効性について解説します。
宅地建物取引士になるまで
宅地建物取引士は国家資格であり「宅地建物取引業法」にて、細かく規定されています。宅建士は所定の試験を受験し合格しなければなりませんが、試験の実施は国土交通大臣の指定を受けた試験期間が行い、一般財団法人不動産適正取引推進機構が行っています。
宅建士の試験に合格すると「資格登録」をしなければ、宅建士としての仕事をすることはできません。資格登録は都道府県知事に対し申請を行いますが、申請要件として次の2つのどちらかを満たした上で、欠格要件に該当しないことが必要です。
- 宅地建物取引業での実務経験が2年以上
- 実務経験が2年未満の場合は登録実務講習の修了
登録実務講習は宅建試験の合格後であればいつでもよく、宅建業の実務に就く予定が決まった時でかまいません。
資格登録の欠格要件とは次のようなものです。
- 未成年者
- 破産手続き開始後で復権をしていない者
- 宅建業の免許を取り消されて5年を経過していない者
- 免許の取消し処分に関わり廃業届を出してから5年を経過していない者
- 上記の免許取消し処分を受けたのが法人の場合は、処分を受ける前60日以内に役員であった者が該当
- 拘禁刑を受け刑の執行が終わるか執行猶予期間が終わった者
- 暴力団関係法の罰金刑を受け刑の執行が終わるか執行猶予期間が終わった者
- 暴力団員
- 宅建士の資格登録にあたり違法手段により登録を受けたことにより、登録削除された者で5年を経過しない者
- 宅建士としての禁止処分を受けその処分期間が過ぎていない者
- 心身の故障により宅建士の仕事ができないと国土交通省令で定めるものに該当する者
出典:宅地建物取引業法第18条
登録実務講習とはなにか
登録実務講習修了すると宅建業での実務経験2年以上と同等とされます。
登録実務講習とは国土交通省が登録した「登録実務講習実施機関」で行います。
参照:登録実務講習実施機関一覧
講習カリキュラムは、約1か月間の通信教育と2日間又は1日だけのスクーリングがあり、最後に修了試験があります。実務経験に代わる講習なので実際の業務に即した内容になりますが、比較的修了試験の合格率は高いようです。
登録実務講習についてお伝えしましたが、似た言葉に「登録講習」という宅建士試験に関わる講習があります。
登録講習とは宅建試験の前に受ける講習で、この講習を修了すると宅建試験50問のうち5問が免除されます。この講習を受けることができるのは宅建業に従事している必要がありますが、宅建試験の46~50問は宅建業から少しかけ離れた問題となるため、事前の学習でこの5問を省けると効率的な受験対策となるでしょう。
登録講習は下記の登録講習機関で受けることができます。
宅地建物取引士になってから
宅建士は資格登録を行うと「宅建士証」が交付されます。宅建士証には顔写真と現住所、生年月日が記載され、大きく有効期限が書かれています。
宅建士証の有効期間は5年間であり更新が必要です。更新は有効期限の6か月前になったら法定講習を受講し更新手続きを行いますが、Webによる受講も可能です。
更新時に期限の切れた宅建士証は返却し、新しい宅建士証が交付されます。
有効期限の切れた宅建士証で、宅建士としての業務に就くのは宅建業法違反となり、宅建業者が処分を受けるので注意が必要です。
ここで押さえておかなければならないのは、有効期限は「宅建士証」の期限であって宅建士資格の有効期限ではありません。宅建士資格に有効期限はありませんので、有効期限の切れた宅建士証を使って業務を行う事業者が罰せられます。
宅建試験令和6年問29の問題と解説
令和6年の宅建試験では、宅建士の登録申請要件や更新手続き、そして名義貸しに関する出題がありました。
4つの記述から正しい記述を1つ選ぶという問題です。
各記述にはヒッカケがあるので、よく読まないと混乱してきます。
4つの記述のヒッカケ部分を抽出して解説します
記述-1は、登録実務講習についての文章ですが、登録実務講習実施機関は国土交通省が登録しますので、「都道府県知事が指定する講習」と記述されていますので、間違いであることがわかります。
記述-2は、宅建士証に関する記述です。有効期限が切れた宅建士証は返却をしなければなりませんが、記述では「返納する必要はない」となっているため間違いです。
記述-3は、宅建士の名義貸しの記述です。宅建士証の提示は説明する当人が宅建士であることの証明です。たとえ宅建士の資格を保有していても他人の宅建士証を提示して重要事項を説明することはできません。
記述では、他人の宅建士証を提示して説明した場合、説明した当人が宅建士であれば、処分の対象にならないとしており間違いです。
記述-4は、専任の宅建士の宅建士証が期限切れとなっていた場合、宅建業者は規定に適合させるよう措置をとるのは当然であり、正しい記述です。つまり、問29の正解は「記述-4」が正しいとなります。



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